父は母を“化け物”と書いた。
彼女は、人を観察し、記録してきた。
でもそれだけじゃなかった。
私が気づいたのは、その記録がただの保存ではなく、“刃”だったということだった。

帳簿、映像、LINE、会話、動き、反応。
母は“ただ保存していた”わけじゃなかった。

彼女は、それを最適な瞬間に突きつけて、相手を崩すために保管していたのだ。

Aが崩れたときも。
スタッフが揺らいだときも。
父が死ぬ直前も
きっと全部、母は“選んで出していた”。

私はようやく、その意味を理解した。



観察者でも、傍観者でもない。
支配者だった。