でも、ひとりになって初めて知った。
“誰かに出すためじゃない料理”が、
こんなにも自由で、あたたかいものだったなんて。
ある日、職場の同僚が「お昼、コンビニ飽きちゃってさ〜」と話していた。
何気なく「じゃあ今度、作ってくるよ」と言ってみた自分に、自分で驚いた。
翌朝早く起きて、炊飯器をセットし、卵を焼いた。
鮭の焼き加減も調整して、汁物には少しだけ自信のある味噌汁を添えて。
“どうせ、そんなに美味しくないだろう”
どこかでまだそう思っていたけど、昼休み、弁当箱を開いた瞬間――
「お店の味っていうより、“ちゃんとした家庭の味”って感じ」
その言葉を聞いた瞬間、胸がじわっと熱くなった。
笑われると思っていたのに、誰かが笑顔になってくれていた。
誰かが、“私の料理”をちゃんと味わってくれた。
それが、ただ嬉しかった。