すべて戻すことはできない。
でも、もう一度“今の私”として料理を出すことなら、できるかもしれない。
私の手で、私の言葉で。

緊張しながらテーブルに料理を並べると、遼は少し驚いた顔をした。
「これ…あのときの?」
私はうなずいた。
「うん。もう一度だけ、ちゃんと作りたくて」

遼は黙って、一口。
そして、もう一口。
少し間を置いて、口を開いた。



その瞬間、私は涙が出そうになるのを必死でこらえた。
あの日、突き刺さるように響いた「今度教えようか?」じゃなく、
今の私は、彼の言葉をまっすぐ受け止めることができた。

それだけで、十分だった。