数日ぶりに戻ってきた美咲。
玄関の音に振り返った祐介は、何も言わず立ち上がった。
ふたりのあいだに流れるのは、言葉では埋まらない“空白の時間”だった。

キャリーケースの車輪の音が、静まり返った室内に響いた。

それだけだった。
言葉の後に続く沈黙が、二人の距離を明確に示していた。

リビングへ戻った祐介は、あらかじめ用意しておいた夕食をテーブルに並べた。
ごく普通の、温かい味噌汁と焼き魚、白ご飯。

派手さも写真映えもない、ただ“日常のごはん”。