中では店長がパソコンの前に座っていて、スマホをいじりながら顔だけこちらに向けた。

「実は…毎朝来るお客さんで、コーヒーを買う方がいるんですけど。レジではレギュラーって言ってるのに、マシンではラージのボタンを押してるのを、何度か見ました」
できるだけ丁寧に、落ち着いて話したつもりだった。でも、店長の反応は、想像していたものとは違っていた。
「へぇ…それで?」
「それって…やっぱり、差額分を支払っていないわけですし、不正になると思って…」
「いやいや、君。それ見てたならその場で注意すればいいじゃん」
そう言って店長は、小さく笑った。
「その時間は君らに任せてるんだし。っていうか、ラージ押してるのわかってたのに止めなかったの?」
言葉が出なかった。
なにかが、胸の奥でガチャンと崩れた音がした。