バックルームで制服の裾を握りしめながら、私は泉さんにこれまでのことを打ち明けた。
「コーヒーの量、誤魔化してるあのお客さんの話、私、今日、店長に相談したんです。でも、“その時間は君たちに任せてるから”って……私達のせいみたいに言われちゃって」
泉さんは「はあ?」と、呆れたように息をついた。

私は苦笑しながら、続けた。
「でも、これってやっぱり…詐欺ですよね。ネットでも、“軽犯罪に該当する場合がある”って書いてあって」
「まぁね、間違いなくズルだよね。だけどさぁ…うちら、所詮バイトよ?」
「100円と150円の差でしょ?警察沙汰にでもなったら、こっちが面倒じゃない? 店長が放置してるなら、もう放っときゃいいのよ。正直、私も注意する気にはなれないなぁ」
その言葉に、なぜか胸がチクッとした。
(…放っとけばいい? ほんとにそれでいいの?)