昨日、美優さんに「アンタも持って帰りなさい」と言われたことが、どうしても胸に引っかかっていた。
軽く流すふりをしたけれど、あれは明らかに“共犯”になれという圧力だった。
「ねぇ、遥さん…」
休憩中、思い切って先輩バイトの遥さんに声をかけてみた。
「昨日の廃棄の件、ちょっと気になってて。あれも本当はダメなんじゃ…」
遥さんはカフェラテのカップを傾けながら、少し笑った。
「まぁ、そうかもしれないけどさー。別に困ってる人がいるわけじゃないし。前も言ったけど、バイトだし、あんまり固く考えすぎない方がいいよ?」
その一言に、ズキンと胸が痛んだ。
それはつまり、「気にするな」「黙ってろ」ってことだ。
「でも、ルール違反だし…私たちも巻き込まれたら…」
「うーん、でもさ、正直今さらじゃない? 美優さん、前からやってるし。何かあったら店長が怒ればいいだけでしょ」
遥さんの声に悪気はなかった。
でもその無関心さが、何よりも怖かった。