同居を始めてしばらく経つけど、義姉・麻理恵さんと話した記憶がほとんどない。

一緒にご飯を食べていても、目を合わせることはないし、話しかけても「ああ」「うん」だけで終わる。

私は、気まずさをごまかそうと「お味噌汁、薄めにしてみました」なんて話題を振ったことがある。
でも麻理恵さんは、こちらをチラッと見ただけでそれっきり何も言わなかった。

その静寂が、どこか怖かった。

けれど、本当に怖かったのは、それが日常になりつつあったことだった。

ある日、キッチンで洗い物をしていた時、ふと視線を感じて振り返ると…
ソファに座る麻理恵さんと、目が合った。

私は咄嗟に「何か…?」と声をかけたけど、麻理恵さんはただ無言で目をそらした。

でもその目の奥に、妙な冷たさと、何かを観察しているような“意図”を感じた。