朝の支度は、戦場だった。

義実家での生活が始まってから、毎朝6時には起きて、台所に立つのが私の“務め”になった。
静江さんは「うちでは早起きが基本」と口癖のように言い、毎朝キッチンに立つ私の背後からじっと見てくる。

食器の置き方、サラダの盛り付け、みそ汁の濃度
何もかも、静江さんの“目”に合格しなければならない。

一度だけ、卵焼きにちょっと砂糖を足したことがある。
「うちでは出汁だけで作るの。甘いのは“関東風”でしょ?ここは関西だから」

そう言われて、それ以降、私はレシピを自分で考えることをやめた。

それでも毎朝の「嫁チェック」は続く。
チェックリストという名の、無言の圧力。赤ペンで書かれた「×」の文字が、じわじわと私の自尊心を削っていった。