正式には、「義母に呼ばれて、渡すものを探している途中」という名目だった。
部屋には生活感があまりなく、整頓されすぎていて不気味なほどだった。
その中でひとつだけ、異質なものがあったソファの端に無造作に置かれた黒い小さなノート。
何気なく手に取ってページをめくった瞬間、全身が凍りついた。
「4/3 起床 5:58」
「4/4 味噌汁やや薄め」
「4/5 静江さんに逆らわないが、返事が小さい」
「4/6 昼の洗濯物、干し方乱れあり」
全部、私の行動だった。
鳥肌が立った。
私が毎日どこかで感じていた“誰かに見られてる”感覚。それがすべて、記録されていたなんて。
これは単なる観察記録なんかじゃない。
まるで私の“生活履歴”を積み重ねて、いつでも評価できるようにしているかのような…。