あの“記録帳”を見つけた夜、私は震えが止まらなかった。
何よりも怖かったのは、あの行動が「義姉にとっては普通」だという空気。

誰にも言えなかった。
けれど、このまま黙っていたら私が壊れてしまう
そう思い夫に話す決意をした。

「麻理恵さん、私のこと全部記録してるの。起きた時間、味噌汁の味、洗濯物の干し方まで」
言葉を選びながら、慎重に打ち明けた。
けれど、夫の反応は私の想像を裏切った。

その瞬間、胸が締めつけられるような痛みに襲われた。
几帳面?
私を毎日監視して、日々の行動を記録して、それを“几帳面”で片付けるの?

「……私、怖かったんだよ。正直、義姉さんの視線とか、無言の圧とか…ずっと感じてて」
絞り出すように続けたけれど、夫はスマホを置くことすらしなかった。
「気にしすぎだよ。そんなことで疲れてたら、この先やってけないよ?」

その言葉が、とどめだった。