もう限界だった。

義母の厳しい言葉、義姉の無言の監視、夫の無理解。
すべてが心を削っていった。

その日、義姉のノートをまた目にした。
「梨花、午前5:57 起床。洗面所静か。朝食、味噌汁2杯目手つかず」

細かすぎる記録に、鳥肌が立った。
ここは私の家じゃない。私の“データ収集所”なんだ。

食器棚に手を伸ばしたとき、ふと指が震えた。
「あ、落とす」そう思った瞬間、器が粉々に砕けた。

誰もいない台所で、私はしばらく動けなかった。

そう口にした自分の声が、あまりにリアルで、怖いほど冷静だった。