作業中、隣のラインにいたバイト仲間の中島さんが、ふと話しかけてきた。

俺は苦笑いでうなずくしかなかった。誰かが見ていたんだ。
「休憩時間が無くなっちゃいました…」
「うわ、ひどいな。でも、ここじゃ普通だよ。この工場、そういうとこだから」
“普通”。その言葉がやけに重たく響いた。
「俺も最初、びっくりしてさ。でもさ、タイムカード切った後に掃除しても、別に死ぬわけじゃないじゃん?」
「でも、掃除って労働じゃないんですか?」
俺の問いに中島さんは笑いながら、どこか遠くを見るような目をしていた。