トラックの脇で、俺は工藤さんに状況を説明した。
工藤さんは黙って聞いていた。腕を組んで、マンションのベランダの方をじっと見ていた。
「……マジかよ」
ぽつりと、つぶやいた。
「さっきの、あの箱。お前が積んだ時、揺れてなかったよな?」
「はい。がっちり固定されてました。落ちたりもしてないです」
「運ぶとき、ぶつけたり……」
「してません。水平に持って、そーっと置いただけです」
工藤さんはしばらく沈黙してから、ふっと短く息を吐いた。
「たまーにいるんだよ。“最初から壊れてたのを黙ってる人”。でも証拠ないと、こっちが不利になるからさ」
その言葉を聞いて、胸の奥が冷たくなった。