それが、なにか“おかしなこと”に思える瞬間がある。
その違和感は、ふとしたひとことで一気に膨らんでいく。
朝のゴミ捨て場。
数人の住民が立ち話している横を、私はいつもどおり通り過ぎようとした。
そのとき、ひとりの住民が私の顔を見て、軽く声をかけてきた。
(……また?)
何気ない一言。
でも、私の心にひっかかりが残った。
「“また”って、どういうことですか?」
私が聞くと、その人は少し慌てたように笑った。
「あの部屋、なんかやたらと人が入れ替わるっていうか…気づいたら違う人が住んでるからさ。ほら、うちの階ってけっこう長い人多いじゃない?だから目立つんだよね~」
「そう……なんですか?」
私は愛想笑いでごまかしながら、心の中がざわついていた。
(3503号室って……そんなに退去が多い部屋だったの?)