今では想像できないけれど
あの人は、優しくて、穏やかで、味覚も私とよく似ていました。
私たちの時間は、確かに“平和”だったんです。
あの日までは…。

剛さんとの出会いは、職場の同期飲み会。
二次会を抜け出して、静かな居酒屋で二人きりになったあの夜


「味噌汁の出汁は、昆布派?それともかつお派?」
なんて、おかしな会話をしながら、私たちはゆっくりと距離を縮めていった。

彼は穏やかで、思いやりがあって。
刺激的なことなんて、まるで興味がない人だった。