実家の台所には、唐辛子もラー油もなかった。

棚にあるのは、味噌、醤油、みりん。
どれも“優しい味”の記憶を呼び起こす調味料ばかり。

お味噌汁を一口飲んだ瞬間、
体中が「これだよ、これ」と言っている気がした。


「ああ、私…ずっと耐えてたんだな」

気づいた瞬間、箸を持つ手が震えた。

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