毎朝保育園に子どもを送ってから出勤するのが、私の日常だ。
そんなある朝。
門の前で名前を呼ばれた。
笑いかけてきたその女を見て、私は一瞬、時が止まった。
ワインレッドの巻き髪。明るい口紅。
見違えるほど華やかになっていたけれど、私はすぐにわかった。
中学時代、私を3年間いじめていた“あの女”だった。
無視。悪口。机を蹴られ、鞄を隠された日々。
名前を聞くだけで動悸がした相手が、
今、保育園の送り迎えで“ママ友”として目の前にいる。
「え〜偶然すぎる!うちの子、4歳!Mちゃんとこは?」

無邪気な笑顔。
その口が、どれだけ私を傷つけてきたか、覚えているはずがない。
でも、私は笑ってしまった。
その場を壊す勇気がなかった。