その日は珍しく、夫が一緒に保育園へお迎えに来てくれた。
仕事が早く終わったらしく、子どもを迎えに行くついでに園の先生にも顔を出したいとのことだった。

迎えの列に並ぶ親たち。
その中に、Aがいた。

気づくと彼女は、夫の顔をじっと見ていた。
目だけで、顔だけで、彼を追っていた。

「こんにちは〜!」
Aは明るい声で夫に挨拶をしてきた。

夫も、気さくに応える。
「いつもお世話になってます」

一見、なんの変哲もないやり取り。
Aはスマホをいじりながら、ぽつりと呟いた。


口調はあくまで無邪気だった。
でも、その声の温度だけが異常に低く聞こえた。