Aが他のママたちと楽しそうに談笑していた。
私は少し離れたところからその光景を見ていた。
そのときふいに聞こえてきた。
空気が一瞬、止まった気がした。
Aは笑顔を崩さず、冗談っぽく続けた。
「いや〜、ほら、“この人守ってあげなきゃ”って感じの、か弱い女子ポジっていうか? 昔の彼氏とかいたっけ?」
他のママたちは苦笑い。
なかにはうなずいた人もいた。
私は心臓がギュッと縮むのを感じた。
“昔のMちゃん”なんて存在しない。
私はずっと、殻の中に閉じこもっていただけだった。
Aは、あの頃の自分を棚に上げて、
“記憶の編集者”のように私を語っていた。