「ねえ、Aのことなんだけど」
週末の夜、子どもが寝静まったあと私は話を切り出した。

怖かった。
でも、黙っていられなかった。

Aが私にどんなことをしてきたか。
いま、何をしようとしているか。
彼女が、私たちの家庭にどんな視線を向けているか。

夫は、最初は静かに聞いてくれていた。
でも、私の声が熱を帯びはじめると、苦笑しながら言った。


「今は普通のママなんでしょ? 過去のこと、引きずってるだけだよ」

一瞬、呼吸が止まった。

私は何を見ていた?
私は何を耐えてきた?

なのに一番信じてほしかった人が、何も見ていなかった。