「まさか、こんな形でバレるなんて」
幸福の証として提出したはずの婚姻届が…

「結婚って、こんなに幸せなものなんだ」
そう思ってた。ずっと。

Oさん、33歳。
2年付き合った彼、藤島直哉(ふじしま・なおや)との婚姻届を手に、役所のカウンターに並んでいた。

白いニットに、いつもより丁寧に巻いた前髪。
彼はネイビースーツで、いつもより少し緊張しているように見えた。

窓口の職員は婚姻届を受け取り、無言でパソコンを操作した。

そのときだった。


職員が言ったその一言に、私は凍りついた。

「え? どういう意味ですか? “藤島直哉”って珍しくないから…」

横にいた彼が、すぐに笑いながらかぶせてきた。

「いやあ、同姓同名ってあるしね。偶然だよ偶然(笑)」

でもその笑いが、どこか不自然だった。

その瞬間、私の中で“藤島直哉”という名前が、
見知らぬ誰かの人生に繋がっている気がした。

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