最後くらいは、好みに合わせてあげよう。
あの人が“心から愛した味”を、きちんと手渡して。
そして私は、そのまま
“人生という食卓”から席を立つことにした。

「お見舞い、これしか思いつかなかったの」

私はバッグから真っ赤な瓶を取り出し、テーブルに置いた。


「成分、見てみて。“純カプサイシン”。あなたの愛した味」

剛さんの顔が一瞬で青くなった。

「…な、なにマジで…それ冗談だろ…」

「冗談?」

私はポケットからもう一枚、紙を取り出した。