久しぶりに雨が降った。

部屋に閉じこもってばかりいられず、私は近くのスーパーへ向かった。
傘を差しながら歩く中で、ふと向かいの建物の軒下に目が止まった。

ワインレッドに白の縁取りが入った、古いデザインの傘。
派手でもなく、ありふれているようでいて、どこか特徴的なその傘。

私は知っている。
見間違いようがなかった。


顔は見えなかった。
でも、手元の形、背丈、立ち姿どれも記憶の中の“あの人”と重なった。

私が視線を向けると、その人影はゆっくりと傘を下げて、角を曲がっていった。