私は、とうとう実家に電話をかけた。

母の声を聞いた瞬間、涙がこぼれそうになった。
でも、安心できたのはほんの一瞬だった。

「…帰りたいの。少しだけでいいから、実家にいさせて」

そう伝えると、母は妙な沈黙のあと、ぎこちなく言った。


一瞬、言葉の意味がわからなかった。

「大輝さん、心配してたのよ。“梨花はいま情緒が不安定だから、刺激を与えないでって…
無理に帰すと余計つらくなるかもって。だから…」

その“心配”は、本当に私のためだったのだろうか?
私は、自分の声が震えているのに気づいた。

「お母さん、私のこと…信じてないの?」