数日後の週末。
佐野さんと、もう一人の夜勤スタッフが突然、辞めた。
表向きは「家庭の都合」という退職理由だったが、誰もがそれを信じているはずがなかった。
彼らの名前が書かれたロッカーはすでに空で、持ち物も一切残されていない。

「やっぱり、あの件でしょ」
「そりゃあね、勝手に使ってたらそうなるよ」
「人のせいにしておいて……よく辞めるだけで済んだわよね」

休憩室では、そんな声がひそひそと飛び交っている。
直接的な説明はなかった。
けれど、その“沈黙”こそがすべてを物語っていた。

私たちは黙って見過ごしてきた。
けれど、“あの日の行動”がなかったら、きっとこれからもずっと、そうだったと思う。