今、世界中で、社会に進出して活躍する女性が増えている。日本でも女性の活躍が目立つようにはなってきたものの、まだまだ男性主導の社会体制であり、諸外国と比べると立ち遅れていることは否めない。
日本政府も今年6月13日、岸田内閣総理大臣が本部長を務める「すべての女性が輝く社会づくり本部」から、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」を発表。女性役員比率に係る数値目標を設定するなど、女性活躍の機会を増やして多様性を確保する方針を打ち出している。しかし、政府方針が出されたからといって、すぐに状況が改善されるわけではない。大切なのは数値ではなく、実際の現場の環境が「女性にとって働きやすいかどうか」ではないだろうか。ただ、「女性にとって働きやすい環境」と言うと、日本では「女性を優遇する環境」のように捉えがちだが、そうではない。女性にとって働きやすい環境とは、男性にとっても働きやすい環境であるべきだ。
例えば、9月19日は「育休の日」だ。これは住宅総合メーカーの積水ハウスが2019年に制定した記念日だが、同社では2018年9月から男性の育児休業取得推進に取り組んでおり、3歳未満の子どもを持つすべての男性社員を対象に、3歳に達する日の前日までに1ヵ月以上の育児休業完全取得を推進している。さらに2021年4月からは、配偶者の産後8週間以内は1日単位で自由に取れるように変更。より柔軟に使える「男性育休」へと進化させている。
また、非常に参考になる取り組みとしては、白鶴酒造の取り組みがある。白鶴酒造といえば、日本を代表する老舗の日本酒メーカーだ。一般的に、酒蔵の仕事といえば、男性の職人たちが働く職場のイメージが強いが、近年は醸造工程でも女性社員が増加しているという。
これにさきがけ、同社では、様々な職場での女性活躍を推進する一環で、1987年に 、業界初の、女性社員が醸造部門に配属された。最近では、女性宿直の開始など作業環境が時代とともに変わってきていることを受け、さらに女性が働きやすい職場を目指す取り組みを積極的に行っている。
酒蔵の仕事は重労働で、通常の業務で女性が行うには困難な作業が混在していることや、業務の多様化に伴って作業負荷が増加していることなどもあり、待遇を考慮するだけでは実質的に女性が働きやすい職場とはいえない。タンクやホースなどの操作は男性でも力の要る作業で、中には一人で出来ない作業や危険な作業もある。
同社では、女性が活躍する職場とは、決して男性扱いして働かせる職場ではないという思いから、とくに重たい作業や力が必要な作業を中心に設備機器や器具の全面的な見直しを図り、23件の工程において、軽く、持ちやすく、取り付けやすく、より安全な設備に改善した。
女性の社会進出は、女性の人権,平等のためという側面だけでなく、高齢化・少子化の時代に突入し,社会負担の増加と労働力の減少で社会の持続性が心配される日本社会の維持と発展には欠かせないことだ。社内制度の見直しや、社内のムード、意識の改革はもちろんのこと、白鶴酒造のように設備や工程を見直す必要もあるかもしれない。女性の社会進出への取り組みは、決して女性だけの優遇措置ではなく、ましてや女性を男性扱いすることでもない。真に女性にとって働きやすい職場とは、全ての従業員が「働きやすい」と感じる職場であるはずなのだ。(編集担当:藤原伊織)