日本では今、米不足による米の価格高騰が大きな話題となっているが、食糧の危機は米だけの問題ではない。もしかすると近い将来、多くの農作物が採れなくなってしまうかもしれないのだ。


 その理由はミツバチの減少にある。ミツバチと聞いて、多くの人は蜂蜜やローヤルゼリーなどを思い浮かべるだろう。しかし、ミツバチが我々の健康に良い食べ物を作ってくれる存在だということは知っていても、ミツバチが我々の食生活に欠かせない存在だといわれてもピンとくる人は少ないのではないだろうか。ミツバチは蜂蜜を作る以外にも大きな役割を担っている。それが、植物の受粉を助ける花粉媒介者としての役割だ。


 環境問題に関する国連の主要機関である国連環境計画(UNEP)によると、世界の食糧の約9割を占める上位100種の作物のうち、7割以上がミツバチを含むハチ類による受粉に依存しているという。そんなハチが今、気候変動や環境汚染、農薬の影響など、様々な要因によって減少している。


 ミツバチ減少の原因は複合的で、昨今の異常気象や気候変動、環境破壊、農薬の使用、寄生虫による被害、単一作物栽培による餌不足などが挙げられる。また、それに加えて原因不明でミツバチが大量死する「蜂群崩壊症候群(CCD: Colony Collapse Disorder)」という新しい問題も世界中で発生しており、食糧危機が懸念されている。ミツバチぐらいで大げさだと思うかもしれないが、人類の存続をも左右する深刻な問題なのだ。


 この危機に際し、日本でも環境保全アクションを起こそうと動き出した企業がある。


 株式会社山田養蜂場は、国連が定めた国際記念日「5月20日世界ミツバチの日」をきっかけに、未来へ命をつなぐための環境保全活動「植樹アクションPROJECT」を、同社と同じく養蜂を通じて環境保全に取り組んでいるTBSホールディングス サスティナビリティ創造センターなどと共に始動することを発表した。

まず、ファースト・アクションとして、5月17日に岡山本社で植樹祭を実施するほか、期間中(5月7日~6月6日)の通信販売における売上の一部を植樹費用に充当するという。


 同社では1999年から、豊かな自然を回復するための植樹活動に取り組んでおり、すでに国内外で2,319,564本の木を植えている。今回の「植樹アクションPROJECT」は、同社のこれまでの活動をさらに進めて、世界中で実施できるアクションに拡大するために立ち上げた。同社と同じく養蜂を通じて環境保全活動に取り組んでいるTBSホールディングス サスティナビリティ創造センターがこれに賛同し、さらに港区赤坂公園課や大昆虫展、LifeSeasons,Inc.(米国)など、世界中の企業や団体とも連携して、プロジェクトを進めていく。


各社のコメント


 山田養蜂場 取締役 守安健一氏


 25年前から環境保全のための植樹活動をはじめ、これまで国内外で230万本以上を植えてきました。国連により世界ミツバチの日が制定されたことから、より多くの皆さんと手を取り、この活動を拡げてゆきたいと考え、TBSさんとプロジェクトを立ち上げました。ミツバチに感謝し、豊かな自然環境を祈りながら、社員で1000本の植樹活動を行いました。子供たちの未来が豊かなものであるよう、これからも社会活動を続けてまいります。


 TBS サスティナビリティ創造センター CSR推進室長 秋沢淳子氏


 このプロジェクトの立ち上げに際し、多くの企業様、団体様にご賛同いただいたことに感謝しております。ひとりひとりの小さなアクションが、子供たちの未来につながる、そのために、一過性のもので終わらせることなく、永く取組みを続けてゆきたと思います。


 バディスポーツ幼児園 世田谷 園長 富岡哲司氏


子どもたちが笑顔で過ごせる環境づくりや自然との共存を学べる良い機会だと思い、この企画に賛同しました。日々、どんぐりの苗木への水やりを通して、子ども達の自然環境の学びや情操教育に繋がればと思います。


 「植樹アクションPROJECT」では、植樹活動はもちろん、蜜源植物を花壇に植えたり、この取り組みをSNSで紹介することもアクションとして捉えている。苗木を植える、花の種をまく、ミツバチの大切さを考えながら絵を描くなど、あらゆるアクションを「#ミツバチ植樹アクション」でつなぎ、世界に発信していきたい考えだ。


 企業の植樹活動に個人で参加するとなると、時間や手間、労力を考えて二の足を踏んでしまう人も多いかもしれない。しかし、庭やベランダの花壇に種を蒔いたり、花やミツバチの絵を描いたり、ハッシュタグをつけて、ミツバチやきれいな花の写真をSNSにアップすることくらいなら、気軽に参加できるのではないだろうか。同社ではミツバチの姿を描くことで植樹活動にもつながる「ミツバチの一枚画コンクール」も実施している。個人でもできる小さなアクションが、やがて大きなアクションとなり、ミツバチたちが蜜を集め、命をつなぐ豊かな自然環境を増やしていく。今年の「5月20日世界ミツバチの日」を機に、あなたも「植樹アクションPROJECT」に参加してみてはいかがだろうか。(編集担当:石井絢子)

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