トヨタ、日産、マツダ、SUBARUの日系自動車メーカー4社と石油大手ENEOS(エネオス)は、ガソリンに植物由来のバイオエタノールを混合して環境負荷を抑えた「低炭素ガソリン」を燃料とする競技車で自動車レースに参戦した。5社はこの試みを一般市販車両への普及を見据えた実証実験と位置付ける。
具体的には手はじめとして、ENEOSが開発した低炭素ガソリンを使った前述自動車4社の競技車が5月30日から6月1日に富士スピードウェイで行なわれた「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レース」に出場した。ENEOSが製造した「低炭素ガソリン」燃料を耐久レースの厳しい環境の下で使用し、技術視点におけるフィードバックを目的としている。
低炭素ガソリンを燃料として搭載した「#28 TOYOTA TGRR GR86 Future FR concept」は、決勝で13着、完走でレースを終えた。
低炭素ガソリンとは、既存の化石燃料由来のガソリンにバイオエタノールを混合した燃料。バイオエタノールはトウモロコシやサトウキビなどに含まれるグルコースおよび草本系植物やパルプなどを原料とするセルロースを発酵させて製造する。原料となる植物などが大気中のCO2の吸収することから、化石燃料比で炭素排出量が少ないという特徴がある。近い将来のカーボンニュートラル社会を実現する燃料として期待されている。
バイオ燃料の普及が進んでいるブラジルでは、バイオエタノール混合ガソリンの価格が通常のガソリンよりも安い。これは政府が政策で補助金を出し、バイオ燃料を普及させようと積極的に進めているからだ。こうした動きはブラジルだけではなく、今後アジア諸国にもひろがるのではないかと言われている
ENEOSでは、これまでエタノール20%混合ガソリン(E20)の規格がJISで定義されていないことや国内外の技術情報が不足している問題に取り組んできた。すでに海外では10%程度の混合ガソリンの社会実装が行なわれているが、日本ではバイオエタノールの安定調達や供給インフラの整備、燃料品質や車両搭載への対応が必要な段階にまだ留まっている。
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、ENEOSと自動車メーカーの協働体制で「燃料を鍛え」、バイオ燃料普及を加速させる。