ミクニ(Mikuni Corporation)とスズキは、電気自動車(BEV)に関する先行開発業務の委託について基本合意したと発表した。スズキがミクニに委託する業務はおもにBEVのサーマルマネジメントに関する記述開発施策で、ミクニの小田原事業所の施設にスズキの試験設備を導入し、ミクニの開発エンジニアが業務を担当する。


 自動車業界はもちろん、あらゆる産業においてカーボンゼロの脱炭素ソリューションへの要求が多様化するなか、サーマルマネジメントは自動車の電動化において最も重要な要素とされる。今回の両社の業務委託により、ミクニがこれまで積み重ねてきた実績ならびに知見をスズキのBEV先行開発業務に活用するという目論み。


 電動車におけるサーマルマネージメントとは、車両のさまざまなコンポーネント(バッテリー、モーター、インバーター、充電システム、空調など)の温度と消費エネルギーを効率的に管理する技術とプロセス全般。電気自動車では、あらゆる車両性能に影響するバッテリーの適切な温度とエネルギーのマネージメントが重要だ。


 ミクニはグループビジョン「VISION2033」に掲げているように、BEVにおいて重要となる電池温度を正確に予測制御し劣化を抑制を含む熱エネルギーの制御システムを開発・製造することで、地球環境保全につながる電動化の未来に貢献するとしている。


 そのために、ミクニが持つデジタル開発・システム開発能力を活用して、スズキの開発機能の一部を担う事を通して、開発効率の向上に寄与したいとも。


 ミクニは、かつて“キャブレターのミクニ”と言われ、1960年代には仏ソレックスのキャブをライセンス生産していた。現在は主力製品である四輪自動車・二輪車用の燃料噴射装置およびその関連部品をはじめ、生活環境機器、福祉車両、介護機器、航空宇宙産業向け部品、緑地関連商品など企画から製造まで幅広く事業を展開している企業である。


 スズキは2024年に発表した技術戦略の中で技術哲学“エネルギー極少化”を掲げる。これは製造からユーザーの使用中、そしてリサイクルに至るまでのあらゆるシーンにおけるエネルギーの極少化に加えて、技術開発にかかるエネルギーも含む。スズキは本件をはじめ協力・相互活用を通じて、工数、設備、期間も極少となる技術開発体制を標榜・推進し、製品のライフサイクル全体でのエネルギー極少化を目指すとしている。(編集担当:吉田恒)

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