「香り付き製品の臭いで頭痛、吐き気が起きる」「臭いが原因で子どもが学校に行きたくないと言う」「柔軟剤の臭いにマスクしていても電車に乗るのがつらい」「スーパーの職員さんが柔軟剤を使った服装で商品を並べたら、臭いが商品についていて、食べられない」などなど、想像以上に「香害」が深刻化している。


 特に柔軟剤や香りつき合成洗剤、香り効果の持続に使う「香りマイクロカプセル」が大人はもちろん子どもたちに深刻な影響を与えていることが今月20日、地方議員を中心に超党派の議員151人でつくる「香害をなくす議員の会」や市民団体5団体で構成する「香害をなくす連絡会」による都内での共同記者会見で明らかになった。


 ナノサイズから30μm以下の「香りのマイクロカプセル」は鼻から入り、脳に悪影響があると懸念されているほか、肺の奥に入り込めば「ぜんそく」や「呼吸器系疾患」を引き起こす危険も指摘されている。


 香り成分が何なのか、消費者団体や市民団体が成分開示を求めても「企業秘密」を盾に開示しないのが現況。


 20日の記者会見では「新しいシックスクール問題と言える『香害』による健康障害から子どもたちを守るため、教育現場での影響把握と科学的データに基づく施策の基盤整備に取組んでほしい」と化学物質過敏症(香害を含む)に関する全国的な実態調査を行うことなど阿部俊子文部科学大臣に7点からなる要望が行われた。文科省職員が記者会見場で要望書を直接受け取った。


 要望では「香料入り洗剤・柔軟仕上げ剤(以下柔軟剤)などの身近な生活用品から発せられる『人工化学物質』によって、頭痛・吐き気・倦怠感・動悸・呼吸困難などの症状が引き起こされるケースが増加し、社会問題になっている」と強く警鐘を鳴らした。


 また「抗菌消臭成分を配合した製品による『香害』も増え、全国で患者数が100万人以上とされる『化学物質過敏症』の入口となる可能性も指摘されている」と指摘した。


 特に子どもたちが学校生活の大半を過ごす『教室』での「香害」が深刻とし「化学物質への曝露は将来的な健康リスク要因となるため、学校環境における予防的対応が極めて重要」と早急な対応を求めた。


 記者会見では2024年度に日本臨床環境医学会・環境過敏症分科会、室内環境学会・環境過敏症分科会が全国約1万人の児童生徒を対象に行った「子どもの『香害』および環境過敏症状に関する実態調査」で、学校で香害による体調不良を起こしたことがある子どもの割合が中学生で12.9%、小学生で8.9%にのぼり、約2%は「香害」のために不登校傾向にあることが判明とのデータが示された。


 そのうえで(1)香料・抗菌消臭成分入り洗剤・柔軟剤、香料製品の使用を控える指導の明文化と徹底」を図ること(2)教職員・保護者・児童生徒への教育・配慮の文化を醸成すること(3)教室の換気徹底と座席配置やマスク着用支援などの柔軟な対応を図ること(4)給食用白衣では家庭洗濯に関する指導の徹底、香料・抗菌消臭成分入り洗剤・柔軟剤の使用回避の周知、衛生管理への配慮を図ること(5)カーテン等の備品・衛生用品・生活用品等に関する対応指針を盛り込み、「香害」への言及を明確化などを求めた。


 「香害をなくす議員の会」と「香害をなくす連絡会」はこれら要望に対する文科省としての対応を9月20日までに特定非営利活動法人(NPO法人)日本消費者連盟「香害担当」に回答するよう、期限を区切って要望した。


 NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議は2021年発行の「STOP!香害」冊子で「香害は特定の人だけの問題ではありません。だれでも突然に症状が出てくることがあり、こどもへの影響はさらに深刻です。

過敏な人が安心して生活できる環境は、全ての人にとって良い環境です。香害の被害者にも加害者にもならないために、人工的に香りを付与した製品の使用は控えましょう」と呼掛け、使用を控えることが「香害対策の大きな一歩になる」と消費者に理解と協力を求めている。


 「香害」を今以上に深刻化させないために「家庭用品品質表示法」を改正し、柔軟剤などすべての成分表示を義務付けることも視野に検討していくべきだろう。「成分は企業秘密」ということであれば、公表しないことを条件に行政が成分情報を入手し、どの成分が『香害』原因になっているのかを検証し、原因が解明された時点で、その成分の使用を禁止することを法定すればよい。是非、厚労省、文科省、経産省、消費者団体、経済団体、学識経験者らによる検討委員会を立ち上げ、問題解決に努めてほしい。


 今回の教育現場に関する要望については、文科省が9月20日までに何らかの回答を示した際にコラムの続きを記したい。「香害」は自然界のものでなく、人工的に創り出された「害」であることを原点に解決すべき責任が発生源にはある。(編集担当:森高龍二)

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