ロシアによるウクライナ侵略以来「東アジアでも同じことが起こりうる」と政府・与党が抑止力強化を理由に列島要塞化への動きを強めている。
防衛省は中国・上海を射程に入れた射程距離1000キロ以上の「12(いちふた)式地対艦誘導弾(能力向上型)」など長距離ミサイルを全国6か所に配備すると発表した。
北海道(上富良野駐屯地)、茨城(百里基地)、神奈川(横須賀基地)、静岡(富士駐屯地)、熊本(健軍駐屯地)、宮崎(えびの駐屯地)に配備する。
「12式地対艦誘導弾(能力向上型)」や米国製巡航ミサイル「トマホーク」は「火薬庫」で保管することになるが、その火薬庫、防衛省は全国で130棟を増設予定。
中でも京都南部から奈良北部、大阪北東部に広がる関西学研都市内の陸自祝園(ほうその)駐屯地(京都市精華町~京田辺市、東京ドーム100個分の広さ)では8月から14棟増設へ工事が始まった。1棟に最大40tの弾薬保管機能を持たせる。
8棟は27年度完成を目指す。残り6棟もすでに3棟は設計段階に入っている。西日本最大規模の火薬庫で海自と共有する。「トマホーク」を含めた保管庫になるとの見方がある。
有事になれば真っ先に標的にされるのは空港と継戦能力のための火薬庫。これを心配して火薬庫建設に反対してきた住民らは工事が始まったことから「長射程ミサイルの配備をしないように」その一点で運動し、要望したいという。
今月21日、奈良市内でこの火薬庫問題を考える会主催の催しがあった。精華町住民は「町長は『(火薬庫増設は)相応しくないが、共存していくと決めた』『危険だというな。
一方、祝園分屯地から5キロ圏内に住む奈良県生駒市の住民は「祝園分屯地から10キロ圏内に市人口の約半分6万人が居住している」と火薬庫事故や有事の際の危機感から「生駒市に対し、火薬庫整備について住民説明会を開くよう防衛省に要望してほしいと求めているが、分屯地所在の自治体でないので要請の必要はないと考えるとの回答だった」と市の姿勢を強く問題視した。
祝園ミサイル弾薬庫問題を考える「生駒準備会」の溝川悠介さん(大阪府立大学名誉教授・応用物理学)は「弾薬庫は学研都市のほぼ中央にあり、エリアには150以上の研究所、企業・大学・国会図書館・住宅などが立ち並び、約26万人が居住している。また奈良市や生駒市の住宅地とも連なる。ここに弾薬庫を増設し、長距離ミサイルまで保管されれば『軍民分離の原則』に反し、住民の危険性は著しく増大する。軍事施設と民間住宅が隣接することは国際法違反」と指摘する。
火薬庫問題は原発問題に通じるところがある。どこの自治体に位置するかではなく、施設からの距離ですべての関係自治体が対応することこそ現実的で、実効性がある。
原発は世論の力で「原発地域振興特措法の適用範囲」を半径5キロ圏域から行政区を超え「半径30キロ」に拡大された。火薬庫も説明責任や安全性担保への責任は国や所在自治体のみでなく、隣接する奈良市や生駒市も市民の安全に対し負うべき責任があるといえよう。市民の不安払拭や安全担保の行動を地元自治体として積極的にとるべきだろう。
政府・与党には「ミサイル頼みではなく、外交力強化に最優先で取り組んでほしい」という人たちの声に耳を傾けてほしい。(編集担当:森高龍二)