これまで「放置しても税金は安いまま」と高をくくっていた実家の空き家が、家計を揺るがす大きなリスクへと変貌した。2026年度から、改正空家等対策特別措置法に基づく「管理不全空家」への課税強化が全国の自治体で本格運用されている。
なぜ「6倍」という、耳を疑うような増額が起こるのか。それは、これまで受けられていた「住宅向けの特例」という強力な割引制度を没収されてしまうからだ。
日本の税制(地方税法)には、家が建っている土地であれば「人が住むための大切な場所」とみなして、税負担を大幅に軽減するルールがある。具体的には、200平方メートル以下の「小規模住宅用地」の場合、固定資産税の課税標準額を価格の6分の1とする特例だ(総務省:固定資産税制度の概要参照)。しかし、適切に管理されず放置された空き家は「もはや人が住むための家としての役割を果たしていない」と行政に判断される。すると、この「6分の1の割引」という優遇が適用されなくなり、土地本来の税率に戻ってしまう。つまり、税金が上がったのではなく、「これまでの大幅な値引きが打ち切られた」結果として、支払う額が実質6倍に膨れ上がるというわけだ。
この「管理不全」という言葉、自分には関係のない極端なゴミ屋敷などを想像しがちだが、実際には誰の実家でも起こり得る日常的な風景が判定の分かれ目となる。
例えば、台風や地震で剥がれかけた外壁を「そのうち直そう」と放置していたり、雪の重みや飛来物で割れた窓ガラスをガムテープで補修したままにしたりしていないだろうか。これらは行政の目には、単なる放置ではなく、将来的に破片が道路に飛び散り、通行人に怪我を負わせかねない「事故の予兆」として映る。
また、庭の雑草や樹木についても注意が必要だ。
加えて、庭先に置かれたままの古い家具や段ボール、あるいは郵便受けから溢れ出したチラシの束もリスクをはらむ。これらは第三者による「不法投棄」を呼び寄せる呼び水となり、最悪の場合、乾燥した季節の「放火」を誘発する格好の標的になりかねない。
もちろん、こうした状態を見つけて自治体がいきなり課税を6倍にするわけではない。まずは「このままでは危険です」という助言や指導から始まり、それでも改善されない場合に初めて「勧告」という重い段階へ移行する。この勧告を受けた時点で、これまで受けられていた税の優遇措置が停止され、実質的な増税が確定する仕組みだ。つまり、地域の安全を脅かす「放置のサイン」を無視し続けた結果として、本来の税負担に戻されるというわけである。
背景にあるのは、日本の空き家が900万戸を超え、もはや個人の問題では済まない「地域リスク」になっている現状だ。2月8日の衆院選を経て誕生する新政権下でも、空き家対策の加速は避けて通れない国家課題であり、所有者には「権利」だけでなく、周辺環境を守るための「管理責任」がこれまで以上に厳格に問われることになる。
「空き家」は今、思い出を大切に保管する場所という役割を超え、地域社会の安全を支える重要なピースとなっている。固定資産税の優遇措置が停止されるというルールは一見厳しく映るが、それは「家を整えることが、家族の資産と近隣の安心を守ることに直結する」という新しい時代のメッセージでもある。

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