マーケットが大きく動く際、私たちはスマホの通知やニュースの見出しで状況を確認します。しかし、実は私たちがその一行目を読み始めるよりも遥かに早く、市場ではすでに膨大な取引が成立しています。


 その主役は、高度なAIを用いた「アルゴリズム取引(高頻度取引:HFT)」を駆使するヘッジファンドや機関投資家などのプロの組織です。かつての証券取引所は、人が手サインを出し、電話で注文を飛ばす「熱気」の場所でしたが、現在の主役は、取引所の売買システムが置かれたデータセンター内の「同一フロア」という物理的な最短距離に、自社の高速サーバーを設置した無機質なコンピューター群です。


 象徴的なのが、「コロケーション」と呼ばれる徹底したスピードへの極限追求です。光の速さは秒速約30万キロメートルですが、1ミリ秒(1000分の1秒)の差を争う世界では、通信ケーブルのわずかな長さによる「伝送遅延」すら命取りになります。そのため、莫大な資本力を持つ機関投資家たちは、取引所の心臓部のすぐそばに自社のサーバーを設置する環境を整え、情報の「鮮度」を1マイクロ秒(100万分の1秒)単位で競い合っています。


 彼らは、米国の指数や為替の変動といった「公開情報」を、人間が文字として認識するよりも早くデータとして自動検知し、反射的に注文を出します。これは決して不正ではなく、ネット上の「誰もが見られる情報」を、いかに早く価格に反映させるかという究極の知能競争です。今夜の飲み会で相場が話題になった際、私たちがニュースを一行読む間に、巨額 of 資金を動かすAIが光の速さの限界に挑みながら価格を織り込んでいるという事実は、現代市場のスピード感を象徴するエピソードと言えるでしょう。


 しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。「AIに勝てないのなら、個人の情報収集に意味はないのか」ということです。実は、AIが得意とするのは、あくまで「既に出た数字」への反射に過ぎません。膨大なデータから「次に何が起きるか」という社会の空気感や、企業の技術に秘められた将来性を読み解く力は、依然として人間に分があります。


 私たちが目にする1分足や5分足のチャートは、いわば「AIたちの格闘の足跡」です。その激しい動きの裏にある「本質」をじっくりと咀嚼することこそが、光の速さでは測れない、人間だけの投資の醍醐味なのかもしれません。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

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