今回のニュースのポイント


・法案提出の見送り:2026年の通常国会に向け、厚労省の研究会が「2週2休を基本とし13連勤を上限とする案」などを提言しましたが、上野厚労相は「現在は提出を考えていない」と明言し、法制化は先送りとなりました。


・政権方針の影響:高市政権が掲げる日本成長戦略会議において、労働規制の「強化」から「柔軟化・緩和」への検討が始まったことが、改正案見送りの背景にあります。


・現場の二極化:義務化は未定となりましたが、深刻な人手不足により「休息の質」を自主的に高める企業と、旧来の働き方を維持する企業との間で、人材確保の格差が広がる見通しです。


 2020年代に期待されてきた休息のインフラ整備は、大きな転換点を迎えています。厚生労働省の研究会がまとめた、2週2休を基本とし13連勤を上限とする案や、終業から始業まで11時間の休息を義務付ける労働基準法の改正提言。しかし、上野厚生労働大臣は記者会見において、2026年の通常国会への法案提出は「現在のところ考えていない」と述べ、法制化は見送りとなりました。この動きは何を意味するのか。一言で言えば、経済成長を優先する政権方針の下で、労働者保護と柔軟な働き方のバランスが再検討されているということです。


 背景にあるのは、法制化による現場の混乱への懸念と、政権の経済戦略の変化です。提言された13連勤制限や勤務間インターバルは、過重労働を防ぐ強力な枠組みとなりますが、交代制勤務の維持が困難になる中小企業の懸念や、高市政権が重視する「労働市場の流動化」との整合性が課題となっています。例えるなら、ランナーの安全のために給水所を法的に義務付けようとしたものの、「今はもっとスピードを出すべき時期だ」という声に押され、設置義務化が先送りされた状態です。


 影響の整理として、制度化が未定となったことで、直ちに法的拘束力が生じることはなくなりました。すぐに影響が出るのは、法改正を見込んでシフト調整やシステム改修を検討していた企業です。義務化が先送りされたことで、対応の優先順位を下げる動きが出る一方、深刻な人手不足の中で人材を確保するため、法改正を待たずに11時間インターバルを自主導入する企業との二極化が進む可能性があります。

すぐには出ないが関係することとして、つながらない権利の議論があります。休日や深夜の連絡拒否をルール化する動きは、法案提出見送り後も、現場の慣習を少しずつ変えていく指針として議論が継続されます。


 今後の注目点は3点あります。1点目は、2026年夏に向けた「日本成長戦略会議」において、規制緩和と労働者保護のどちらに軸足が置かれるか。2点目は、インターバル制度を導入した企業への助成金などの支援策が拡充されるか。3点目は、法改正を待たずに各業界で「働きやすさ」を競う自主的な取り組みがどこまで広がるかです。このニュースを改革の停滞と見るのではなく、より実効性のある、持続可能なルールを模索するプロセスとして捉える視点が大切です。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

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