ビルといえばこれまで、RC造や鉄骨造が普通だった。ところが今、新しい技術を用いた「木造ビル」の可能性が、にわかに注目され始めている。
木造建築のメリットの一つは、鉄筋コンクリートなどと比べて二酸化炭素の排出を抑えることができる点だ。脱炭素社会の実現に向けて世界が動いている中、ビルの木造化は大きく貢献する。不動産投資を考える上でも今後、重要な検討材料になることは間違いないだろう。
今年5月、大手ゼネコンの大林組が、地上11階、地下1階建ての、純木造耐火建築物としては国内最高44メートルを誇る木造建築物を横浜市中区に完成させたことで、木造ビルの可能性が一般にも知られるようになり、期待が一気に高まった。また、三井不動産と竹中工務店も、東京の日本橋に2025年の完成を目指して国内最高層の木造賃貸オフィスビルを建設する計画を発表している。その他の多くの建築メーカーでも、マンションなどビル建築の一部に木造部材を取り入れるなど、取り組み始めているようだ。
では、これまで木造ビルはなぜ普及しなかったのか。耐火性や耐震性の問題もあるが、何より大きな問題は費用がかさむことだろう。多くの木造ビルは、免震構造を使用したり、鉄骨を木のパネルで被覆したり、他の構造との混構造、特殊金物の使用などによって建築されているため、コストも割高となってしまう。
この課題をクリアにすべく、普及型純木造ビルの研究開発に積極的に取り組んでいるのが、アキュラホームだ。木造建築のエキスパートである同社は、一般流通材料と住宅用木材プレカット加工技術を用いた「普及型純木造ビル」を開発。特殊な技術や資材を使用しないことでコストを抑えることに成功。
同社の川崎展示場には、すでに日本初の「純木造ビル5階建てモデルハウス」が公開されており、現在は埼玉県さいたま市に「8階建て純木造ビル」の建築も進めている。同社ではさらに研究を進め、モデルハウスの建築過程にかかるCO2排出量を鉄骨造、RC造の約1/2、建築費については同規模の鉄骨造、RC造の約2/3程度となるよう開発を行っている。これなら一般の建築主の選択肢にも木造ビル建築が入ってくる。しかも、すでにある技術を応用している上に生産インフラも整っているため、加速度的に普及する可能性も高い。
基礎や柱、壁などがしっかりしてさえいれば、木造建築は鉄骨造などと比べて、設計に融通が利き、比較的自由にデザインすることができるのも大きな特長だ。リフォームやデザインも幅が広がり、ライフスタイルなどの変化にも対応しやすい。下層階を貸店舗などにして、上層階を自宅スペースにするなど、資産を有効に活用することもできる。普及型純木造住宅が今後の日本の街並みを大きく変えていくかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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