このシステムの導入により、規制対象となる化学物質及び成形品に含有することで環境や人の健康被害が懸念される物質(高懸念物質・SVHC)の適切な把握、管理が効率的に行えるようになる。
具体的な数値としては、含有調査の依頼から入手、審査、登録までの工数が減ることにより、村田製作所側だけでも年間約1000万円のコスト削減、さらに仕入先側でのコスト削減も見込まれる。また、調査依頼から入手、審査、登録に至るまでの村田製作所側の日数が半減し、業務効率も大幅にアップする見通しだ。
ちなみにREACH規則とは、07年6月に施行された、EUの新しい化学品規制のことで、年間の製造輸入量が1トンを超えている化学物質に対し、欧州化学物質庁へ、化学物質の登録、安全性評価、使用制限、使用認可を届け出ることが事業者に義務付けられている。また、単に届け出ればよいというものではなく、生産の上流側から下流側へ安全性についての情報も提供しなければならない。
REACH規則の施行により、これまで政府が行ってきたリスク管理を事業者が義務付けられる形となり、施行当初から化学産業界、特に中小企業への負担が大きくなること、EUへの輸出の影響、EUでの化学産業の競争力が損なわれる恐れなどが懸念されていた。さらに、EU当局への情報提供の対象となる物質は、今後もますます増加する傾向にある。つまり、EUで事業を展開する化学産業系の企業だけでなく、EU域内に化学物質を含んだ製品を輸出するすべての企業にとって、このREACH規則への早急な対応が至上命令となるのだ。そのため、EUへも多くの製品を輸出する村田製作所でも対応を進めているということだ。
今回、村田製作所は「EP-NET」を導入するにあたり約600社にのぼる仕入先に対して説明会を設け、理解を促した。「EP-NET」を導入することによって、化学物質及びSVHCのデータを相互に確認できるようになり、規則対応の為の煩わしい作業は軽減され、業務のスピードアップが期待できる。また、REACH規則に対応するということは、EUだけでなく、日本国内や諸外国においても、村田製作所の製品に対する消費者の信頼度を高めることに繋がることは言うまでもない。
村田製作所では、今後さらにシステムの範囲を広げ、最終的には得意先及びEU当局への情報提供を効率化する「化学物質管理システム」を完成させる予定だ。
(編集担当:藤原伊織)

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