西新宿在住のスーパーギタリスト〝マーティ・フリードマン〟が完全ドルヲタ宣言! 三度のメシよりJ-POPが好きという彼が、お気に入りのアイドルソングを鬼レコメンド!! 今回はオリコンデイリーシングルチャートで、初登場、推定146.2万枚を記録した大ヒットシングルを分析!#11_AKB48『ラブラドールレトリバー』  つい先日、この連載で「プロフェッショナルな楽曲&サウンドにアイドルっぽい声=アマチュアっぽい声を乗せるという手法は1960年代のアメリカにもあった」という話をしたよね? 実はその代表格がAKB48だとボクは思っている。  特に『ラブラドール・レトリバー』を聴いてみてよ。
音楽に詳しい人ならわかると思うんだけど、このメロディセンス、楽曲アレンジは1960年代のアメリカのアイドルサウンド=バブルガムポップにそっくりなんだ。当時のアメリカにはこういうハッピーなサウンドが一杯あったんだけど、ボブ・ディランやビートルズが出てきたくらいから、どんどんなくなっていっちゃったんだよね……。  で、この曲でもそうなんだけど、AKB48の曲ってサビがとにかく気持ちいい。心地いいよね。実はこれには大きな秘密があると思っている。  彼女たちの曲の多くは、大人数による合唱によって歌われているよね。でも、ボクの耳で聴くと、メインとなるのは2~3人のボーカルの歌声を多重録音でたくさん重ねたもので、その後ろに他のメンバーの合唱を薄く敷き詰めてある……そんな印象がある。  もちろん、これは批判のために言ってるわけじゃないよ。これは音楽制作の現場ではよくあることだし、よりクオリティの高いものを作るための手法のひとつなんだ。  ボーカルの声質というのはひとり一人異なる。大人数で歌ったとき、その声質の違いが違和感を生むことがある。その違和感を消すには似ている声質を重ねるか、同一人物の歌を数テイク録って重ねることがよくある。
山下達郎さんやトッド・ラングレン(アメリカのシンガーソングライター)のコーラスが心地よく響くのも、彼らがたった一人でコーラスを多重録音しているからなんだ。  AKB48の場合、その歌声のキーとなっているのは高橋みなみちゃん(以下、たかみな)ではないかと睨んでる。たかみなちゃんはTV番組『新堂本兄弟』にレギュラー出演してたよね。ボクも出演したことがあるんだけど、あの番組ではスタジオに入っていきなり楽譜を渡されてリハーサル演奏する、なんてことがある。つまり、あの番組をこなせているのは、たかみなちゃんが相当な実力の持ち主である証拠。AKB48のレコーディングでも彼女は大活躍しているんじゃないかな。  AKB48のサウンドは今のアイドルポップス、いや、すべてのJ-POPの王道。あの素晴らしいサウンドはどのようにレコーディングされているのか、気になって仕方がない。録音現場、見学にいくことって無理なんですかねぇ? (構成・文/尾谷幸憲)Marty Friedman マーティ・フリードマン ギタリスト、プロデューサー。全米で1000万枚以上のCDを売ったヘヴィメタルバンド「メガデス」に在籍。2004年から日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZ『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』への全面参加。
ニューアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)が発売中。月刊エンタメにて誌面版「マーティ・フリードマンのヘドバン★鋼鉄推薦盤[メタルレコメンド]を連載中! 【公式HP】http://www.martyfan.com/
編集部おすすめ