主演の伊野尾や、ストーリーテラーとなっている神宮寺ら、眉目秀麗な男性キャストに注目が集まりがちの今作だが、実は女優陣も若手注目株、演技派、個性派が集結した豪華なラインナップとなっている。今回はそんな女優陣にスポットを当て、それぞれの名シーンを番組プロデューサー(以下・番組P)に選出してもらい、前半戦をプレイバックする。
【写真】『准教授・高槻彰良の推察』若手注目株、演技派、個性派が集結した女優陣【9点】
第1話のゲストとなったのは志田未来。コックリさん騒動に揺れる小学校の教師役で出演した。番組Pは悩みながらもベストシーンとしてコックリさん騒動を引き起こした原因を志田が告白する場面を挙げた。
「コックリさんによって起きた現象を主人公が解明し、物語は一旦収束するかに見えるんです。でもそこで志田さん演じる教師・まりかの声が歪む。(※嘘を吐くと声が歪んで聞こえる)そのセリフを口にする志田さんの表情がまさに『無』なんです。その直前まで相談者として普通にリアクションしていた分、その『無』が良い意味でものすごく気持ちが悪い(笑)。物語の外にいたはずなのに、その表情ひとつで第1話の主役に躍り出た。そのあとの感情の吐露はさすがの一言。
志田はそのシーンで2回、「気持ちが楽になりました」と同じセリフを口にする。同じ台詞のはずなのに、全く違う心情が視聴者にも届くのは志田の演技力の賜物だろう。
第2話ゲストは山田杏奈と金沢美穂。姉妹役として「わら人形の呪い」にかけられた妹と、妹を守ろうとする姉の姉妹役として出演。この話では衝撃的なラストが視聴者を待ち受けていた。事件解決と思いきや両者の声が歪み、嘘を吐きあったままエンディングを迎えたのだ。あのエンディングこそが見どころだろうと思ったのだが、番組Pはそれぞれ別のシーンをピックアップした。
「山田さん演じる大学陸上部の期待の新人・綾音は実は自作自演で怪異を引き起こしていたんです。そんな山田さんのベストシーンは第2話冒頭のグラウンドを走っている場面。状況説明として陸上選手である綾音が練習で走っている描写なのですが、その表情がすでに深い悩み、葛藤を感じさせていたのは山田さんの感受性あればこそかなと。あの顔を見せられたら監督もプロデューサーも惚れますね。姉の琴子を演じた金澤さんも最初に主人公に相談に来るシーンがすごかった。
第3話のゲストは、鬼伝説が残る村の住人・鬼頭(久保酎吉)とその息子の妻・実和子(奥村佳恵)。今回は女優にスポットを当てているので、奥村のシーンだけプレイバックしてほしいと番組Pに無理なお願いをしてみた。
「第3話は原作にもある鬼の伝承が残る村での悲しい事件を描いたストーリーなんです。鬼の骸骨が見つかったと思いきやそれは江戸時代の人の骨で、それがきっかけで裏にあるもうひとつの死が浮かび上がってくる。そんなストーリーの中、奥村さん演じる実和子は幼子を抱えて村に住む普通の女性。の、はずなんですけど、最初の登場から不穏な空気感をまとって演技をしてくれました。『絶対この人、怪しいぞ』って(笑)。なのに、ラストで主人公が真実を解明した時に、一気に感情を爆発させて思いを吐き出したシーンがもう人の弱さとかやさしさとか全部を表現していて……最後の涙はずるい。あれを見せるためにずっと怪しくしていたとしたら計算がすごすぎます。あと、やっぱり久保さんのベストシーンもいいですか? 途中で洞窟の中で慟哭する久保さんは圧巻でした。編集を担当しているスタッフがわざわざ『鳥肌たちました』と言いに来たくらいですから」
昨夜放送した第4話は、映画の撮影現場で起きる怪奇現象がテーマとなった。
「第4話は芸能界のお話で、登場人物たちが感じる悩みや葛藤は、おそらく多かれ少なかれ市川さんも馬渕さんも感じていたり、身近に見ていたりすると思います。そういう意味では自分の中で役柄をイメージしやすい設定だったかもしれません。ただ、脚本の藤井さんと台本を作る際に第4話の裏テーマとして据えたのが、女性が生きていく上での『年齢の壁』なんです。一般社会でもそうだと思うのですが、日本はまだまだ『若さ』が価値基準のひとつになりがちで、芸能界は特にそれが強い。そこへの抗い、がむしゃらさみたいなものを真っすぐに表現することで、女性を縛る変な枠組みを取っ払ってしまいたいなと。市川さんも台本のその部分を感じてくださり、ラストの思いを吐露するシーンに全力で臨んでくれました。台本に書かれていない部分も含めて更紗の人生全てを乗せる珠玉の1カットになったと思います。一方、馬渕さんは登場からいい意味で偉そう(笑)。いるいるこんな人、というキャラクターをさらにデフォルメして、でもリアリティを感じさせていたのはさすが。冒頭、高槻が飲み物を勧めるシーンがあるのですが、伊野尾さんがセリフを言い終わる前に『結構ですぅ』とぴしゃり。その芝居、モデル誰かいるでしょ!?って現場で笑いをこらえるのが大変でした。
プロデューサーの言う通り、更紗のラストシーンは見ている側にも胸に来るものがあった。そのシーンを振り返り市川と馬渕はインタビューにこう答えてくれた。
市川「若い頃から女優をしている更紗と同じように、私も14歳から女優を始め、この業界の色々な面を見てきているので、更紗が感じている事に共感できる部分は多かったです。悩みを誰にも言えず、ずっと心の中に“あるもの”を抱えながらも、女優という仕事を一生懸命やっている姿や、それを吐露する姿は、演じていて胸に迫るものがありました」
馬渕「私は、更紗の独白を聞きながら『こんなふうに思わせてしまって申し訳ない』とか『この痛みって、私(マネージャー)の痛みでもある』とか『もっと彼女を輝かせる仕事を取ってこなきゃいけない』と思いながら、宮原を演じました。私だったらそういうマネージャーさんに側にいて欲しいので!」
女優陣プレイバック、ラストを飾るのは、このドラマのヒロインで高槻研究室の大学院生・生方瑠衣子を演じる岡田結実。根が明るく、怪異や人の抱える闇など暗くなりがちな物語の空気感をふわっとやわらかくしてくれるこのドラマの癒し的存在だ。そんな瑠衣子を演じる岡田に対し、番組Pは「実は一番難しい芝居を要求している」と答えた。
「このドラマはキャラクターが強い登場人物ばかり。そんな中で瑠衣子は誰よりも『普通』な存在なんです。実は『普通』が一番難しい(笑)。モノマネも癖がある人をまねるのは簡単ですよね。
プロデューサーのインタビューを終え、もう一度、頭から俳優陣の芝居を見返したい気分になってしまった。単なる「伏線」ではない、「芝居の面白さ」も楽しめる「准教授・高槻彰良の推察」の世界。9月4日土曜23時40分の第5話「呪われた部屋の怪」放送を前に、FODで過去放送回を復習してみるのも悪くないかもしれない。
◆第5話あらすじ(9月4日放送)
嘘が分かる能力を失い「助手を止めさせてほしい」と尚哉(神宮寺勇太)が言う。高槻(伊野尾慧)は「分かった」と受け入れるが…。そんな中、何故か不幸続きの難波(須賀健太)が尚哉に泣きついてくる。原因は不幸の手紙にありそうだが、事もあろうに高槻は自分が代わりに呪われると言い出し…。
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