ドラマは毎週土曜日の放送の度にSNSで話題となっているが、実は原作本も爆売れ状態なのだ。
【写真】Hey! Say! JUMPの伊野尾慧が主演・ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』場面カット【3点】
そもそもキャラクター文芸とは何なのか。小説の分類として最近定着してきた分野で、明確な定義はまだないものの、総じて主人公やその周囲の登場人物たちが漫画やアニメのように個性的で、かつ舞台設定も特殊な小説をカテゴライズしたものと言って良いだろう。
今作は完全記憶能力(瞬間記憶能力)を持った主人公と、嘘が分かる大学生という凸凹バディによる謎解きミステリー。それぞれ単独であればどこかで見た事のある設定かもしれないが、この2つの異能が重なることで、実は物語が掛け算的に面白くなっているのだ。
例えば、原作の「針を吐く娘」のエピソード。(ドラマでは「わら人形の怪」として第二話で放送)女子大学生が「針の呪い」に追いつめられる中、それぞれの「嘘」が謎を深める構造となっている。面白いのが、「嘘」は必ずしも「悪意」を持った人間だけが吐くものではない、というリアリティだ。
その場を盛り上げるため、相手に忖度したため、人を傷つけないため……「嘘」の裏にある人間の弱さ、悲しさを准教授の高槻が完全記憶能力によってその背景を浮き彫りにし、登場人物が抱える本当の思い、悩みをやさしい解釈で救っていく。このミステリーと人間ドラマの二重奏は一度はまると癖になるに違いない。
原作の魅力としてもう一つ上げられるのは、面白雑学を楽しむことが出来る高槻の講義シーンだろう。そもそも民俗学とは、古い文化や民間伝承が歴史的にどう形作られてきたのかを研究する学問。高槻は幽霊や呪いなどの怪異現象や、都市伝説の研究を専門にしている。
講義シーンでは、実際に作者の澤村御影氏が文献などで調べた都市伝説の成り立ちについてなどが細かく高槻の台詞として起こされており、実際に高槻の講義を受けたかのような満足感を得ることが出来る。
出てくるワードもキャッチーなものが多い。「不幸の手紙」や「きさらぎ駅」、「紫鏡」に「ジェットババア」。読めば誰かに話したくなる、そんな雑学が満載で、民俗学入門書としても充実した作品になっている。何より「民俗学ってこんなに面白かったのか」と気付かされることもしばしば。ドラマを見た視聴者からは「大学時代に民俗学の講義を取ればよかった」という声も多く上がっている。我が子や親戚の子供にプレゼントすれば、知識欲を育てるきっかけにもなるかもしれない。
最後に、この原作の最大の魅力は何と言っても、登場人物たちの魅力的なキャラクター造形だ。主人公の高槻は「イケメン」「聡明」「博識」なのに「絵心がない」「怪異に触れると理性がぶっ飛ぶ」など、イケ要素×残念要素が混在している。
バディを組む大学生の深町尚哉は「地味」×「中身イケメン」、高槻の幼なじみの刑事・佐々倉健司は「強面」×「おばけが怖い」。「●●なのに△△」と対比するような魅力を掛け合わせることで、そこにギャップが生まれ、キャラクターの魅力がより際立つ作りになっている。
読者は、そんな登場人物たちのどこかに自分を投影でき、怪異と言うファンタジーの世界観の中でも素直に感情移入しながら物語を読み進めることが出来るのだ。原作にはEXエピソードとして主要人物たちのそれぞれのドラマも収録されている。自分の推しキャラクターの物語を楽しむことが出来るのも、この原作の魅力の一つかもしれない。
そんな「准教授・高槻彰良の推察」の世界。ドラマは今週第6話。原作にもある「図書館のマリエさんの怪」が放送される。原作オリジナルの都市伝説がテーマになっていて、これまでのドラマエピソードとは一線を画す、すべての登場人物の純粋な思いにあたたかな涙があふれる珠玉の感動作になっているという。放送はいつもより20分遅い9月11日土曜24時から。(東海テレビ・フジテレビ系)興味を持たれた方はFODで過去放送回をチェックしてから見るのもお勧めだ。
◆第6話あらすじ(9月11日放送)
女子中学生が“図書館のマリエさん”に呪われたかもしれないという話が高槻(伊野尾慧)のもとに舞い込んでくる。図書館にある何冊かの本に書かれた数字を声に出して読むと呪われるという。呪われた少女・美弥(横溝菜帆)と友人の柚香(平澤宏々路)に話を聞き、謎を解くため図書館へ行く高槻と難波(須賀健太)。一方、数字を読み上げてしまい留守番をする羽目になった尚哉(神宮寺勇太)は瑠衣子(岡田結実)の様子が少しおかしいと感づき…そんな中、高槻は図書館職員の雪村桃子(松本若菜)が何か隠し事をしていることに気付く。
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