2017年にDDTプロレスとアップアップガールズがタッグを組んで結成された「歌って、踊って、闘える」アイドル・アップアップガールズ(プロレス)。結成当初、メンバーとして選ばれた3人も、アイドルとプロレスの両立、というその意味を真に理解していたとは言い難かった。
それでも5年の間、リングとステージに真摯に向き合った彼女たちは確かに人生を変えた。メンバー3人に聞いたそれでもプロレスを続けた理由…2回目は、憧れはデスマッチという根っからのプロレス好き乃蒼ヒカリのインタビュー。

【写真】ハードコアマッチにも挑戦、リング上で白熱したバトルを繰り広げる乃蒼ヒカリ【15点】

──乃蒼ヒカリさんが、アプガ(プロレス)に応募したきっかけを聞かせてください。

乃蒼 私はほんとにプロレスがやりたくて、もともと東京女子プロレスを1回受けたことがあったんです。当時はまだ北海道の高校生で、親にも高校生は1回しかできないからって止められたんです。それからちょっとプロレスを離れてどうしようと思っていたときに、たまたまアプガ(プロレス)のオーディション募集を夜中のテレビで見たんです。東京に出てきていたし、よし!と思って応募しました。

──アイドルに対してはどう思っていたんですか?

乃蒼 アイドルは全然知らなかったです。その頃は、絶対プロレスの方がしんどいからアイドルはできるだろうって考えていたんです。ですが甘かったですね。今、絶賛痛い目を見ています(笑)。私的には受け身を取るより、ダンスで手足を別々に動かす方が全然難しいです(笑)。


──(笑)。実際に活動を始めてからはどんなことを感じましたか。

乃蒼 オーディション期間からあっという間にアイドルデビュー、プロレスデビューだったので、自分の気持ちが追いつく前にお客さんに応援されていたって感じでした。アイドルデビューの@JAM EXPOも、自分がよくわかってないままステージに出て、お客さんの数に圧倒されながらいきなりオイ!オイ!応援されている感じでした(笑)。しかも『アッパーキック!』の運動量がえげつなくて、生きて帰れないと思いました(笑)。でも私としては、まだプロレスデビューできてないし、まずはここを乗り切らなきゃって気持ちでした。

──プロレスラーを目指していたヒカリさんにとっては、アイドルデビューが最初の難関だったと。

乃蒼 そうなんです。自分が目指していた景色は後楽園ホールだったので。

──では、2018年1月4日の東京女子プロレス・後楽園ホール大会のプロレスデビュー戦の感想は?

乃蒼 当時のメンバー4人の中で、私が一番プロレスに気持ちを入れているのをお客さんも知ってくれたからこそ、人生で初めてくらいのプレッシャーを感じました。デビュー戦で勝ちたい! 負けるわけにはいかない! 一歩でも二歩でも先に行ってアプガ(プロレス)を引っ張る存在になりたい!と思っていたんです。けど…完敗しました。
(渡辺)未詩ちゃんに負けました。

──プロレスラーになる夢は叶ったけど、いきなり壁にぶつかったと。

乃蒼 そうなんです。そこからアプガの4人でずっと試合していたんですけど、初期の頃の私はほんとに体力が無くて、みんなに追いつけてなくて泣きながら練習してました。一番しんどかったことは、気持ちと体が追いつかないことです。気持ちは前に行くけど体力も無いし、身長も小さいんですよ。しかも自分がすっごい人見知りで、先輩に「体力つけるにはどうしたらいいですか?」とかも全然聞けなかったんです。

──それが変わったきっかけは?

乃蒼 (東京女子プロレスの)先輩の坂崎ユカさんの存在ですね。私は昔に東京女子を見始めた頃からユカさんがすごく好きだったんですよ。同じ世界に入ってみたら、ユカさんが想像以上にすごい人だったんです。後輩のことも見てくれるし、練習でも全部わかりやすく教えてくれて。口だけじゃなく、体で教えてくれるのもありがたかったです。
リング上の動きでも、ユカさんは自分がサポートすることで相手を上手く見せることができるんです。私の中では、ユカさんのおかげで自分がここまで伸びたって感覚はあります。

──素晴らしい先輩がいてくれたおかげで、壁を突破できたと。では、ヒカリさんのターニングポイントになった試合は?

乃蒼 第5回東京プリンセスカップの出場者決定戦(2018.6.3・新宿村スタジオC106大会・ヒカリ vs ミウ)です。シングルのトーナメントの最後のひと枠をかけて未詩ちゃんと戦って、自分が勝ってトーナメントに出られた試合はめちゃくちゃ大きかったです。私はずっと未詩ちゃんに負け続けていて、その年の2月にやっとシングル戦で初勝利できたんです。その未詩ちゃんとトーナメントの最後の枠をかけて戦うって、絶対負けられないじゃないですか。お客さんも注目してくれて、それまではお客さんから「これからもがんばろう」って感じの言葉をいただいていたんですけど、そのとき初めて「絶対勝ってね!」って声をたくさんもらったんです。そこで、自分もプロレスラーとして認められてきたのかな?って思えてうれしかったですね。

──では、ヒカリさんがアプガ(プロレス)の活動で変化したことを聞かせてください。

乃蒼 気持ちが強くなりました。最初の頃は試合が終わるたびに泣いていたけど、今は悔しいって気持ちを原動力にできるようになりました。
お客さんからちょっと厳しいことを言われるとめちゃくちゃへこんでいたんですけど、今は、1年後には絶対にファンにさせてやるからな!って思えるようになりました(笑)。

──見返してやるぞと思えるぐらい性格が変わったと。

乃蒼 そうです。もし、手のひら返ししてきたときには、手をバキバキに攻めてやろうと思っています(笑)。

──(笑)。そんなヒカリさんですが、アイドルは苦手と言いながらもアプガ(プロレス)の先陣を切ってソロデビューまでしてしまいました。

乃蒼 想像もしてなかったです。アプガ(プロレス)で新曲ができますって言われるたびに、うれしい気持ちもある反面、それ以上にレコーディングと振り入れどうしよう?って気持ちが大きかったんです。アイドルとしては今だに手探り状態なんですよ。なのに、3人の中で一番先にソロデビューすることになってほんとびっくりしました。でも、私が上手くいけば、他のメンバーにもチャンスが回ると思うし、とにかくがんばるしかないなって思っています(笑)。

──ではヒカリさんは、アプガ(プロレス)ならではのよさってどんなところにあると感じてますか?

乃蒼 普通のプロレスの同期って、どんなに仲がよくても最終的にはその子に勝たなきゃいけないじゃないですか。
でも、私たちはアイドルとして一緒に大きな舞台を目指すって目標があるんです。なので、一緒にいる時間も悩む時間も長いと思うんです。プロレスラーとしてどうなりたいか、アイドルとしてどうなりたいかって自分をさらけ出してしゃべれるし、ここに行くぞ!って最終的な目標が一致していたりするので団結力も大きいと思います。

──では、今のヒカリさんはどんな目標があってどんな思いがあるのかを聞かせてください。

乃蒼 プロレスラーとして、まだまだ全然序盤の序盤だと思っています。私は、自分の思い描いていたプロレスラー像にめちゃくちゃ蛇行しながらここまで来たって感じなんです。インターナショナル・プリンセス王座に着くことができたり、好きなハードコアマッチを戦わせてもらったりうれしいこともいっぱいあったんです。

そういう中で、3月19日の東京女子の両国国技館大会(『GRAND PRINCESS ’22』)で、アメリカのAEWで活躍されている志田(光)さんと戦わせてもらったんですけど、ほんとに手も足も出ない状態で負けたんです。久々に若手の頃の自分を思い出して、改めてまたここから進んでいけばもっともっと強くなれるって思えたんです。ほんと、プロレスラーとしてやりたいことはいっぱいあります。またベルトを狙いたいし、海外にも行きたいし、いろんな選手と試合したいです。ハードコアもたくさんやりたいし、憧れのデスマッチもやりたいです。
そして、私がずっと思っている、東京女子のエース的な存在になりたいって夢を絶対叶えたいです。

──期待しています。では、アプガ(プロレス)のオーディションに応募してくれる人へのメッセージをお願いします。

乃蒼 私はアイドルを知らないままプロレスが好きで入ったんですけど、ほんとに1ミリでもアイドルだったりプロレスに興味があったらチャレンジした方がいいと思います。最近いろんな物事に対して、もっと早く始めればよかったってことが多いんですよ。なので、今やりたいと思うなら今チャレンジした方が後悔しないと思います。私はプロレスラーになりたくてアプガ(プロレス)に入ったけど、アイドルとしてもすごく楽しい経験をさせてもらっているんです。ライブ会場でプロレスさせてもらったり、TIFで路上プロレスやったり、普通にプロレスラーだけ、普通にアイドルだけやっていたらそんなことできないじゃないですか。アプガ(プロレス)に入ったら、想像以上にすごく刺激的な生活になると思います。そしてアプガ(プロレス)に来て欲しい子は、私が人見知りなので気軽に話しかけてくれる仲よくできる子が入って欲しいです(笑)。あと、DDTプロレス社長の高木(三四郎)さんを車で轢けるようなガッツのある子とか、私が好きなハードコアを一緒に戦ってくれるような子が来て欲しいです!

▽アップアップガールズ(プロレス)2022 新メンバーオーディション
プロレスラーとして日本武道館メインイベント、アイドルとして日本武道館単独公演を目指すアプガ(プロレス)が初の新メンバーオーディションを開催。応募締切:2022年4月17日23時59分まで。詳細は(https://www.yum-audition.jp/)まで。

【あわせて読む】プロレスが変えた人生、アプガ(プロレス)らく「ずっと死んでた人生が、やっと生きられた」
編集部おすすめ