脳外科の看護師として働きながらTikTokのフォロワーは90万人。5歳から始めた空手では世界一になったことも。
アクション女優、タレントとしても活躍する“四刀流”長野じゅりあが、今度はプロレスラーとしてリングデビューを果たした。「自分に妥協することが許せない」と言い放つド根性の持ち主だけに、その突貫ファイトは壮絶そのもの。なぜ彼女はプロレスデビューに至ったのか。その波乱に満ちたこれまでの半生を振り返りつつ、今後の目標を熱く語ってもらった。(前中後編の前編)

【写真】プロレスコスチュームで見事なハイキックを見せる長野じゅりあ、ほか撮り下ろしカット【13点】

──これまでも様々なジャンルで活躍されてきた長野選手ですが、とうとうプロレスラーとして華々しくデビューしました。現在のところ、手応えはいかがですか?

長野 そもそも私、プロレス自体を見たことがほとんどなかったんですよ。だから今になって「あっ、プロレスってこういう感じなんだな」と発見することが多いですね。プロレスって単に闘うだけじゃなくて、選手同士で絆を感じたりとか、心を揺さぶられたりとか、お客さんにも気持ちがすごく伝わっていくジャンルだと思うんです。本当にプロレスってすごいよって、自分でやりながらも感動しているのが現状です。

──まだリングに上がったのは数試合。右も左もわからない感じですか?

長野 右はかろうじてわかったけれど、左は皆目見当もつかない……といった感じですかね(笑)。とにかく今はすべてが初めての体験なので、目の前のことをこなすので精一杯です。


──すでに伝統派空手の世界で確固たる実績がありますから、まったくの素人が新人デビューするというわけではないですよね。

長野 でも私の場合、空手といっても型の選手だったんですよ。型って基本は1人でやるものですから。タッグで闘うなんていう経験も当然なかったし、これまでやってきたこととは別物と考えています。一番違うのは、競技空手ってお客さんの反応を気にして頑張っているわけではないんですよ。プロレスをやっていると、お客さんからの反応がダイレクトに来るから、そのことがすごく気持ちいいんですよね。

──デビュー2戦目となる後楽園大会では、前プリンセス・オブ・プリンセス王者で極真空手出身の山下実優選手とシングルで闘いました。この試合では、わりとズタボロにやられた印象があります。

長野 山下選手とは練習も一緒にやったことがなかったので、まったくの初対面だったんです。もちろん選手として強いことは事前から知っていましたけど、予想していた強さの20倍くらいリング上で圧力を感じましたね。ローキックを2発くらい喰らった段階で、「こりゃヤバいぞ」って焦りました。とにかく痛いし、強いし、オーラや眼力もハンパないし……。
「フルコンタクトVS伝統派」ということで空手家同士の一戦という見方もあったみたいですけど、やってみた実感としてはプロレスラーとしてのキャリアの差がモロに出ちゃったなと。たしかに試合展開は一方的に私がやられていただけなんですけど、その中でも「オラ、立って来いよ」という愛のある励ましを感じたんです。そのへんの器の大きさも、さすがに10年選手だけあるなと唸らされました。

──さて今回は長野選手のこれまでの歩みを振り返りたいのですが、まず空手を始めたのは何歳くらいのときだったんですか?

長野 5歳です。無理矢理、母親に道場へ連れていかれました。糸東流という流派。自分の意思で始めたわけじゃないものの、6歳か7歳のときに出た大会で全国5位になれたんですよ。ここからですね、本格的にのめり込んでいったのは。

──センスがあったということでしょうか。

長野 いや、センスはまったくなかったです。むしろセンスがないぶん、努力でそこを補うタイプで。なにしろ5歳の段階で、1日3時間の練習を週7日やっていたんですよ。
というか、5歳から18歳まで1年365日まったく休んだことがないんです。インフルエンザのときも練習はしていたくらいですから。さすがにインフルのときは道場ではなく、家で稽古していましたけど。周りからは「運動神経がいいんだね」とか言われますけど、私、まったくそんなことはないんですよね。

──最初は親にやらされただけだったのに、なぜわずか5歳で練習の鬼に?

長野 小さい大会で優勝するようになると、「負けたくない」という気持ちが芽生えてきたんです。勝てばお菓子も買ってもらえるし、周りからもすごいねってチヤホヤしてもらえるし、単純にそういうことが子供心にも気持ちよかったんですよね。

──空手の世界では、最高でどこまで行ったんでしょうか?

長野 10~11歳クラスで世界一を獲ったことがあって、キャリア的にはそこが最高峰でしたね。世界大会だからすごい数の選手が参加するんですけど、まず地域ごとの予選で勝ち抜くことも大変なんですよ。型の試合なので、基本的には技の美しさを競うことになります。あとは1人でやっていても、相手がそこにいるように演舞することも大事でした。

──当然、黒帯でしたよね?

長野 もちろん。黒帯は小2で取りました。
10歳の時点では初段、今は2段を持っています。なんだか自分でも不思議なんですよね。習い事は空手以外にも小さい頃からいろいろやっていて、ダンス、テニス、ピアノ、水泳、柔道、キックボクシングと本当にいろいろ通ったんですよ。だけど、全部ダメ。1ヵ月以上続いたものは何もなかった。塾すら続きませんでしたね。だけど、なぜか空手だけはムキになって練習していたんです。

──空手の何がそこまで長野選手を夢中にさせたんでしょうね?

長野 自分でできる練習量のMAXを出せば世界一にもなれる。そう考えたら、やっぱり練習にも熱が入りますよね。あとは空手ってスポーツであると同時に武道の要素も強いから、礼儀作法とかも自然に身につくんですね。小学生のうちから挨拶とか上下関係とか敬語とかも「押忍!」の精神で理解できていたから、学校でも「じゅりあちゃんは偉いね~」とか褒められることが多かったんですよ。それが最高にうれしかった。
小学生なんて大人に褒められることが最高の勲章ですから(笑)。もう本当に空手のことしか考えていなかったもんなぁ。(中編に続く)

▽PROFILE
ながの・じゅりあ◎1996年2月10日、島根県生まれ。T159cm、B80・W60・H86。趣味:筋トレ、旅行。最近、ハマっていること:洋服の毛玉取り。最近の悩み:身体を絞りたいけど、シュークリームやドーナツがやめられないんです。好きな男性のタイプ:強そうな格闘家タイプに守られたいという気持ちもあるけど、どういうわけか「僕を守って~」みたいな弱々しい男性に好かれる傾向があります(笑)。でも今は恋愛よりも自分の夢を実現させることに熱中しているので、胸キュン要素は韓国ドラマだけで十分かな。

5歳より空手を始め、2006年の「第5回糸東流空手世界選手権大会 形の部 9歳~10歳 女子3級以上」にて優勝を飾り世界王者に。2011年には『サルベージ・マイス』で女優デビュー。看護師として病院に勤務しつつ、グラビアやバラエティなどでもマルチに活躍を続ける。
2022年3月、東京女子プロレスの両国国技館大会でリングデビュー。TikTokやYouTubeでも絶大な人気を誇る。

【中編はこちらから】空手家から看護師、女優へ…長野じゅりあが語るひとつに絞らない生き方
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