空手、剣道、テコンドー、ヌンチャク、古武術……と多種多様な特技を持つ”武道美女”安井南。TikTokで元剣道部の経験をもとにした「剣道部あるある」などのを披露し、人気を博している現役大学生だ。
今回はそんな彼女の、素顔とこれまでの軌跡を聞いた。(前中後編の前編)

【写真】安井南の撮りおろしカット【10点】

──TikToker、モデル、女優、武道家……さまざまな面から話題を振り撒いている安井さんですが、まず武道の面からお話を聞かせてください。そもそもご自身の中では何が主軸になるのですか?

安井 自分のベースにあるのはテコンドーです。小学校1年生のときから始めました。最初はお兄ちゃんが習っていて、その付き添いで見学に行ったら「何これ? すごく楽しそうじゃん」とか思いまして。実際にやってみたら本当に楽しかったんですけど、途中で道場がなくなってしまったんですよ。それで別の道場に切り替えたんですけど、ここが本当にスパルタで(苦笑)。でも逆に自分の闘志に火がついて、いよいよ引き戻せなくなった感じです。

──厳しいというのは、どのくらい?

安井 いや、もうハンパじゃなかったですよ。特につらいのが「鬼の合宿」と呼ばれるもので、2泊3日で心身ともに鍛え直すという。まずですね、見たこともないような巨大な体育館に集められるところからスタートします。小学校の朝礼みたいに400人くらいが一斉に稽古するんですけど、怖い大人が15人くらい何らかの武器(笑)を持ちながら監視していまして……。


──武器? 穏やかじゃないですね。

安井 武器というのは主に竹刀なんですけど、先端部分が裂けてきているんですよ。なにしろ人を物理的に叩きすぎているものですから(笑)。あとはゴルフクラブの先っちょがないやつも武器にしていたな。合宿での稽古は列になってやるんですけど、少しでも動きが遅い人を見つけたら躊躇なく鉄拳制裁! そんな感じでした。

──まるで昭和の極真じゃないですか! 安井さんの世代でそこまで根性論丸出しの特訓を経験したのは非常にレアだと思います。

安井 いや~、でも本当に精神は鍛えられましたよ。結構それは自分のベースになっているはずです。テコンドーは今でもゆるやかに続けているんですけど、一番自分を追い詰めていたのは中学に入るくらいまででしたかね。でも本当に小学校のときは体力があり余って仕方なかったんですよ。それだけテコンドーに没頭していても「まだ足りない! もっと鍛えたい!」とか思って、空手も並行して習い始めたんです。

──強さに対する探究心が止まらなくなったわけですか。


安井 面白かったのは、空手を始めて最初に出た大会でいきなり優勝しちゃったんですよ。それまでテコンドーで散々鍛えていたから、あれよあれよという間に勝ち進んじゃって。もっともそのときは空手のルールも知らなかったので、警告ばかり喰らってすごく謝罪させられましたけど(笑)。技術的なことに少し触れると、両手による打撃が中心の空手に対してテコンドーってクルクル回るような足技が多いんですよ。それで相手が戸惑ったという面もあったと思うんですけどね。

──テコンドー、空手の次は?

安井 3つ目の競技は剣道でした。中学で部活動を始める際、「今度は武器を使った闘いがしたいな」と考えたんですよね。剣道で人生が広がったという部分は確実にあると思います。というのも剣道って「実は昔やっていた」という大人が多くて、そこで話が広がるケースも多いんですよ。人脈作りに役立つと言いますか。

──競技人口が多いですからね。

安井 そう。
だから空手のときと違って、剣道はなかなか勝てなかったです。やっぱり小学校の頃からやっている人はレベルが違うんですよ。それでも剣道を通じて“武器を使うことの快感”に目覚めてしまいまして、そのうちヌンチャクとかも学び始めるんです。とはいえ、ヌンチャクに関しては独学でしたが。

──なぜヌンチャク? 唐突すぎませんか?

安井 家にヌンチャクがあったんですよ。たぶん鎌倉かどこかのお土産で買ってきたんだと思う。それで私は昔からわりと部屋が汚くなっちゃうタイプでして。テレビとかで紹介されている荷物が異常に散乱した部屋があるじゃないですか。

──さすがにそこまでではないと信じたいですが(笑)。

安井 とにかくそのゴミ部屋みたいな部屋を掃除していたら、ヌンチャクを久しぶりに発掘したんです。「これだ!」と思いましたね。というのもお父さんと一緒によくブルース・リーの映画を観ていたので、単純にヌンチャクへの憧れが強くなっていたんですよ。
だけど空手とか剣道と違ってヌンチャクは先生がいなかったから、自分で画面録画したものをスロー再生しつつ研究したりして、とにかく独学でいっぱい練習しました。ブルース・リーがヌンチャクで相手を威嚇するシーンとか、本当に時代を超えたカッコよさがあると思いますね。最高。

──ブルース・リーの何がそこまで特別に映ったんですか?

安井 なんと言っても、まず動きが軽い! 軽いにもかかわらず、打撃には威力がある! だから説得力が他のアクション俳優さんとは全然違う! ブルース・リーの魅力を挙げていったらきりがないんですが、一番はそこになるでしょうね。

──好きで眺めているだけではなく、実際に自分もやってみる行動力がすごいと感じます。

安井 やってみないとわからないことってありますからね。私の場合、ヌンチャクを始めたことで今度は興味の対象が古武術に広がっていったんですよ。今は天心流兵法という刀や鎖鎌や手裏剣などを駆使する団体に入門し、イチから学んでいる段階なんです。やっぱり想像していた以上に深いんですよね、武器の世界は。

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(取材・文/小野田衛)
▽安井南(やすい・みなみ)
2004年3月13日生まれ、神奈川県出身。インフルエンサー、女優、モデル、タレントなどさまざまなフィールドで活躍している。
Twitter:@yasaiminami
Instagram:yasaiminami
TikTok:@yasaiminami
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