「世界がモノクロの日々だった」昨年11月に体調不良を理由にアイドルグループ「神宿」を脱退した一ノ瀬。約半年に渡る休養期間を経て、今年4月のSNS再開より再び動き出した。
6月にアパレルブランド『REFLEM』のモデルを務め、7月にはオフィシャルYouTubeチャンネルを立ち上げるなど、徐々に活動の幅を広げ始めている。しかし、この復活に至るまで、想像を絶するつらく苦しい時間を過ごしていたという。
自身の病との戦いから復活に至るまでの道程。生まれ変わった今の姿、そして今考える夢について、一ノ瀬みかの真摯な想いに迫った。
(前後編の前編)

【写真】モデル活動も行う一ノ瀬みか 撮り下ろしショット【14点】

──活動再開から5ヶ月ほどが過ぎました。今の体調はいかがです?

一ノ瀬 お休みの上手い取り方や、仕事の際の体力配分が上手にできるようになり、やっと人間らしい生活が定着してきました。グループに所属していた頃は、不規則な生活ルーティンをずっと送ってきて、それが染みつきすぎていたんです。例えば今日は朝7時に起きて、朝ご飯を食べ、メイクしてこちらに向かうという流れで。「そんなの普通じゃん!」と思われるかもしれませんが、そんな「普通」が全くできなくなっていたんです。

この半年……心を完全に壊してからは本当に困難ばかりで、去年12月からしばらくはずっと寝て起きることしかできない毎日を過ごしていました。食べることすら難しく、深呼吸の仕方も忘れてしまいました。“起きる”ということも、果たして自分は本当に目覚めているのか?なんなら自分が生きているのかすら、わからなくなっていましたね。
よく、心が落ち込んでいくと「世界がモノクロの日々」なんて表現を使いますよね。まさにその通りの時間を過ごしていました。今になり、朝の陽ざしを感じられる毎日を送れているのは本当に奇跡だと思いますし、今でも若干信じられません。

──昨年11月5日に活動休止を発表されて、わずか3週間後には脱退発表。これは相当なことだと、ものすごく不安に思ったんです。4月にSNSを再開するまでの、「世界がモノクロ」の日々、どのように過ごしていたのでしょうか?

一ノ瀬 「休みます」と宣言してからの半年間はぼやけていて、とても1日1日が長く重く感じられるような時間で、記憶にもほとんど残らない。ただただ重い日々でした。

──一ノ瀬さんが脱退の際に書かれていた「戻ってくる」という意思すら、自らの重荷になっていたのでは?と邪推してしまって。

一ノ瀬 そうですね。まずは復帰するには体力も気力も回復しなければと思い、とにかく治療だけに専念していました。精神的なダメージは治療のみならず、私生活の根本的な改善を徹底することから始まって。でも、そうしたことを身体に染みこませるのも、ものすごくストレスになってしまう日もあって。


ただ、心の奥底には、もっと早く復帰しなきゃ! みんなが待ってくれている! という焦りも同時にあって。DMやファンクラブメッセージに「今日はこんなことがあったよ。みかちんが早く良くなることを祈っているから、無理しないでね」と、応援の声が毎日届いて。嬉しい、だからこそ、早くその声に応えたいと復活を急ぎたい気持ちの繰り返しでした。

──そうした日々を重ね、4月ごろにファンクラブでのトーク会とSNSを通じて、現状を報告されます。ここに至るまでに、大きなタイミングがあったかと。

一ノ瀬 実はある出来事をさかいに「そっか、私は生きるしかないんだな。仕方ないなあ」と、スッと我に返ったんです。ではこの先も生きていくには? と考えたら、人間関係や金銭面を作らねば、ちゃんと自分の意思で前へ踏み出さないとな。という気持ちが湧いてきたんです。

──達観と言いますか、ある種開き直ったと。

一ノ瀬 その通りです。
やりたいことも夢もあって、周りの人も協力してくれる今の事務所の方もいる。ならば「何を今更、諦めようとしているんだ。これは私の人生。ならば自分を幸せにすればいいじゃん」って、スッと自分の人生への向き合い方がフラットになったんです。これまでは、根本となる考え方が「誰かのため、メンバーやスタッフさんのため」という、「自分はどうでもいい、まずは相手」というものだったんです。そのためにどうするか?と、難しくごちゃごちゃ考えていて。そこから、シンプルな考え方・生き方でいいじゃん!と、切り替わったんですね。

その瞬間から、ものすごく体も心も軽くなりました。今まで呪いにでもかかってたんじゃないかな?ってぐらいに。こうして変わり始めた時期が、偶然にもお医者さんから診断を出された「半年間の自宅療養」から半年たったころで。まさに、今こそ来たるべきタイミングなんじゃない?と、5月ごろからやっと本格的に歩きだせた感じです。正直あの発表時点でも、色々と手探りでした。


──あの投稿の段階で「寛解の目処が立った」と記載していましたが、それでも相当瀬戸際に瀕していらしたんですね。

一ノ瀬 今やっと、冷静になり、自分を見つめ直せるようになったから、こうして話せています。

──今こうして、新しい一ノ瀬みかとしての一歩を踏みしめている最中かと思いますが、この1年で得た新しい発見や、自分の新たな魅力はありますか?

一ノ瀬 そうですね……「優しさ」という概念を改めて知ったのは、この約1年の中で大きなものでした。なんと言いますか、優しさや優しい言葉が、やっと自分の体に染みこんでくるような状態になれたんです。正直これまでは、優しさとは他人に対して与えるものであって、自分に対して与えるものではないという意識があったんです。優しい言葉をいただいても、少し前までの私は嬉しさもありつつ「もっと頑張れる!もっとできる!」と、強さを求めてしまって。人間、気を張り続けていると、優しい言葉や温かい言葉が自分の中に響かなくなるんですよね。私の場合はむしろ、尖った言葉の方が目に飛び込んできやすくなって、SNSでの攻撃的なコメントを見つけては「そうじゃない!」と、跳ね返したくなる気持ちが大きくなってしまって。その積み重ねの結果、ファンの方の心配や優しい言葉に気づかなくなってしまったんです。

やっと自分を許し始めるようになった今年の春頃に、休んでいる間に皆様から届いた「今日も体に気をつけて!」、「応援しているよ!けど、無理はしないでね」という温かい言葉を読み返したとき、ものすごく嬉しくなったと同時に「今までこうした言葉を邪険にしてしまっていた」と気づいて。今までも、たくさんの優しい声は届いていたはずなのに、その本質に気づく事が出来なかったのは、ものすごく勿体なかったと後悔しました。ただ、こうして後悔できたということは、今の私は人の優しさを素直に受け入れられているという証拠。
この優しさを感じることがとにかく嬉しい。毎日心が潤って、豊かさが身に染みる毎日です。

──ファンの温かさが一ノ瀬さんを救いましたね。

一ノ瀬 本当に。正直、みなさんのおかげで、人生2周目入ったレベルで変化しました。今の状態は……「一ノ瀬みか2.0」みたいな(笑)。

【後編はこちら】元アイドル・一ノ瀬みかが思い描く"アイドルのために総合ケア施設"「夢を叶えたい子たちを支えたい」

▽一ノ瀬みか
グループアイドルを経て、現在は歌手・モデル・声優・作詞作曲など幅広く活動。
Twitter:@mika__kmyd
Instagram:@MIKA_KMYD
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