ついに鞘師里保がファンの前に帰ってきた。2015年12月31日以来、実に3年3ヶ月ぶりの出来事である。
「ひなフェス」3月30日・昼公演は、ハロプロ20周年記念回ということで盛りだくさんな内容となっていた。鞘師以外にもモーニング娘。OGとして辻希美、加護亜依、新垣里沙、道重さゆみが登場。このうちスポーツ新聞やワイドショーで破格の扱いを受けたのは辻&加護の「W(ダブルユー)復活」だったが、会場で一番大きな声援を浴びていたのは間違いなく鞘師だった。
ここは現在のハロプロを読み解くうえで、ひとつのポイントとなる。辻と加護のグループに対する貢献度は改めて触れるまでもないし、それを言うなら新垣や道重だってアイドル界においては偉人中の偉人。だが、鞘師の幻想はそれらレジェンドに肩を並べる……あるいは超えるようなところまで膨れ上がっていた可能性が高い。
事実、20歳になった鞘師が『Only you』でステージに登場すると会場のムードは一変した。キレのあるダンス、切羽詰まったようなボーカル、緊張感溢れる表情はあの頃のまま。歌い出しの16小節だけで、圧倒的な存在感に観客は打ちのめされた。
そのままメドレーで『One・Two・Three』をパフォーマンスし終えると、その後のMCで鞘師は道重から久しぶりにステージに立った感想を尋ねられる。
元エースはせわしなく周囲をキョロキョロ見渡しながら「……言葉が出ない。んてっ、んてっ、手が震えちゃって……」と明らかに狼狽した様子。これには客席からも温かい笑い声が漏れる。しかし、ここでなんとか気を取り戻した鞘師は、「モーニング娘。の活動で一番の楽しみはこの瞬間だなっていうのを思い出して、すごく幸せな気持ちです」と改めて感謝の言葉を述べた。
「モーニング娘。の本当の全盛期はこれから来る」
かつてリーダー就任直後の道重は、『月刊エンタメ』のインタビューでそう断言した。
口下手だと謙遜するものの、グループのビジョンや自身のパフォーマンスのことになるとマシンガンのように言葉を乱射する鞘師。撮影の合間もずっと課題曲を口ずさみ続けていたストイックな鞘師。
「歌とダンスのモーニング娘。」その言葉を体現する存在として、鞘師はストイックな姿勢と圧倒的なパフォーマンス力でグループを引っ張った。そしてその復活劇はやはり圧倒的な「熱狂」と「うねり」、そして未来への「希望」を生み出した。それは鞘師の「今後」についての希望である。
時代を切り拓いてきた絶対エースは、果たしてどんなかたちで再びファンの前に戻ってくるのか──?
本人が「まだまだ歌いたい!踊りたい!演じたい!」と明言している以上、今はその気持ちを信じて来るべきXデーを待ちたい。