Netflixなどの普及で自宅で様々なエンタテインメントが楽しめるようになった今だからこそ、「映画館で観る」というのは比類なき贅沢な体験となると語るのは、映画コメンテーターの有村昆。街に人が溢れ、ようやく日常を取り戻せそうな今年の冬に劇場に駆けつけて大スクリーンで観るべき作品をアリコンがリコメンド!

【関連写真】有村昆が激推し、世界でヒット中のインド映画『RRR』

「年末年始も公開していると思うので、まだ未見の方なら絶対にスクリーンで観ておいたほうが作品が大ヒットしている『すずめの戸締まり』ですね。
作品の完成度という意味では、今年度で最高峰の作品だと言っていいでしょう。 新海誠監督の映画はもはやブランドになっていて、『君の名は』『天気の子』と観る側もどんどんハードル上がってるじゃないですか。今回は僕もかなり高く構えてましたけど、それを軽々超えてくるんですよね。

ただ、話の展開はいままでの作品と似ていて、大きな災害がテーマになっている。その扉を鈴芽ちゃんが草太という男の子と一緒に戸締まりをして、災害を閉じていくというお話なんですね。災害は『君の名は』や『天気の子』にも出てくるんですけど、これまでは主人公と相手で物語が完結していたと思うんです。どんなことが起こっても君と僕さえいればいい、みたいな、 非常に自己中心的な若者たち、いわゆるZ世代的な考え方が中心だった。それが今回はちょっと意識が広がっていて、自分たちと世界の調和とか、災害に対する復興とは、という所まで及んでいる。

日本人が災害を考えると、どうしても3.11が浮かんでくると思うんですけど、震災からの復興という意味では、そこに一旦ピリオド打ちませんかという、今の日本の空気感に合わせたメッセージ性もちゃんと入っている。エンターテインメントとして成立させながら、日本人が根底に抱えているアイデンティティみたいなものまで表現していてすごく優秀な作品だと思いますね」

世界中の様々な文化や表現を気軽にスクリーンで楽しめるというのも映画の醍醐味。円安で海外旅行を控えたい今こそ、洋画で世界を体感してみては、とアリコンが激推しする作品はこちら。

「一度観たら忘れられないどころか、スクリーンで何度でも観たくなってしまうのインド映画の『RRR』がオススメですね。
これはもうストーリーも、画作りもスゴいとしか言えないです。主人公が2人の男なんですが、彼らが最初に出会う時ですら異様な盛り上がり。とにかく熱くて、トム・クルーズでもここまでやらないというキメキメのアクションを平気でやってしまう。そのセンスとパワーが最高なんです。

ハリウッド映画に対して負けてないというか、別の角度から対抗してケンカを売っているところがすごくいいですよね。それを象徴するのが、中盤で出てくるダンス対決のシーン。欧米のダンスに対して、お前ら何やってんだ、これが大地のリズムだよ! のように圧倒していく姿には、自分の国や文化に対して誇りを持って、ハリウッドに立ち向かっていくんだという気持ちを感じましたし、日本映画も見習うべきところがあるなとすごく思ったんですよね。

マーベル作品の『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』も公開されましたが、あれはアフリカン・アメリカンがテーマで、やっぱりハリウッド、アメリカ映画なんですよ。あのレベルの作品をアフリカの国が、アフリカのスタッフでが作ったらすごいなと思うし、本来であれば作らなきゃいけない…。とにかく『RRR』を観ればインドのパワーを感じますし、来年は日本も頑張らなきゃと気合いが入りますよ!」

冬休みはぜひ、劇場に足を運んで劇場ならではの映画体験を楽しんでみては?

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