今年もフェスシーズンがやって来る。規制緩和により、声出しのルールが変更になるなど、本格的なフェスの再開を楽しみにしている音楽ファンも多いことだろう。
ここ最近、バックバンドを従えてロックフェスに出演するアイドルが増えている。特に、「JAPAN JAM」や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などロッキング・オン主催のフェスには、毎年、BiSH、ももいろクローバーZ、モーニング娘。らが出演している。かつては、アイドルがロックフェスに出ることへの反対意見や疑問を持つ音楽ファンもいたであろう。しかし、ロックフェスという空間でこそ映える、アイドルの楽曲やパフォーマンスも確実にある。

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今回は、ロックフェス常連のBiSHやももクロを中心に、女性アイドルがカバーしているロックナンバーに注目したい。正式に音源化され、CDやサブスクで楽しめるカバー曲のほか、公式YouTubeで楽しめるカバー曲をピックアップした。

まずは、現在活動しているアイドルグループの中で、ロックフェスへの出演回数が最も多いBiSH。もともと、BiSHのキャッチコピーは「楽器を持たないパンクバンド」だ。アーティスト色も強く、アイドルとして語っていいのか?という問題もあるが、大型アイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」などにも出演しているので、今回はアイドルとして紹介していく。

BiSHの魅力は、何と言ってもライブパフォーマンスにある。
大型ロックフェスにもたびたび出演しているほか、ロックバンドとのツーマンライブの機会も多い。しかも,対バン相手は、東京スカパラダイスオーケストラ、銀杏BOYZ、サンボマスターといった硬派なロックバンドで、ライブでは、セッションなどコラボも披露して来た。

実際に音源化されているロックバンドのカバー曲も多く、メンバーのセントチヒロ・チッチは、ソロで、銀杏BOYZの前進バンドGOING STEADYの『夜王子と月の姫』をカバーしているほか、BiSHとしても、スカパラの『カナリア鳴く空』、サンボマスターの『できっこないを やらなくちゃ』、ELLEGARDENの『ジターバグ』、氣志團の『One Night Carnival』をカバー。各バンドのトリビュートアルバムで聴くことが可能だ(ちなみに、氣志團のトリビュートアルバム『All Night Carnival』は、収録曲全てが『One Night Carnival』のカバーとなっている)。

そして、そんな氣志團と最も関係値が深いアイドルグループと言えば、ももいろクローバーZである。氣志團主催のフェス「氣志團万博」には初回から皆勤賞。逆に、氣志團も、ももクロ主催の大晦日の「ももいろ歌合戦」皆勤賞という、まさに相思相愛な間柄。もちろん、ももクロも氣志團のトリビュートアルバムには参加しているので、是非とも、『One Night Carnival』のももクロバージョンとBiSHバージョンの聴き比べも楽しんでみて欲しい。

ももクロも毎年、多くの夏フェスに出演しているが、フェスでの定番曲となっている『あんた飛ばしすぎ』と『ダンシングタンク』という自己紹介ソングがある。歌詞は、ももクロ仕様にアレンジされているものの、どちらもGARLIC BOYSのカバー。CDやサブスクでも聴くことが出来るので、オリジナルと合わせてチェックしていただきたい。大阪のロックバンドGARLIC BOYSに目を付けるあたりに、ももクロ音楽制作チームのロック魂を感じてしまう。


続いては、ももクロの妹グループにも注目してみよう。エビ中、こと、私立恵比寿中学も「氣志團万博」などフェスに出演しているほか、2019年には、横浜の赤レンガ倉庫で、自らの主催フェスも開催している。フジファブリック、POLYSICS、ニューロティカ、ゲスの極み乙女。といったエビ中に楽曲提供して来たロックバンドが多数集結した、なんとも豪華なフェスだった。そして、そんなエビ中は、2018年に椎名林檎のトリビュートアルバムに参加し、『自由へ道連れ』をカバーしている。もともと、エビ中の楽曲自体、前述したようにバンドが提供した楽曲が多く、ロック色が強いのだが、この『自由へ道連れ』もライブでたびたび披露され、盛り上がる鉄板曲となっている。

さらに、ももクロやエビ中が所属するスターダストプラネットの最年少グループ、B.O.L.Tという4人組グループも紹介したい。HUSKING BEEの磯部正文やB-DASHのGONGONが楽曲提供するなど、バンドサウンドが売りのB.O.L.Tが、2021年にリリースして、ロックファンを驚かせたのが、Dragon Ashの『HOT CAKE』のカバーだ。Dragon Ashの99年のアルバム『Viva La Revolution』の隠しトラックとして収録されていた曲で、アルバムを全曲聴き終えて、CDを再生させたままにしておくと、突然セリフとともに始まる1曲として話題になった。

しかも、激しい曲が多いDragon Ashの中でも、メロウなナンバーでファンからの人気も高く、ライブでもアンコールなど重要なポイントで演奏されて来た曲だ。B.O.L.Tのライブでも、この『HOT CAKE』のカバーは、アンコールなどでたびたび歌われている。B.O.L.Tは昨年、一度だけバンドと共にライブを行っているが、今後は、ロックフェスでバンドを従え、『HOT CAKE』が歌われることにも期待したい。
その時のロックファンの反応が楽しみである。

最後に、YouTubeで観られるアイドルのロックナンバーのカバーも紹介しよう。高城れには、ももクロの公式チャンネルで、Saucy Dogの『シンデレラボーイ』やマカロニえんぴつ『なんでもないよ、』などのカバーを公開。自身のインスタでは、最近のオススメとして、マルシィを紹介するなどバンド好きとしても知られている。過去のソロコンでは、UNISON SQUARE GARDENのカバーなども披露して来ただけに、今年2回開催されるソロコンのセットリストも楽しみだ。

そして、AKB48グループのメンバーにも注目したい。48グループでロックなイメージが強いメンバーと言えば、OGでは山本彩、現役では岡田奈々を挙げる人が多いだろう。山本は、最近では、ELLEGARDEN『風の日』のカバーをリリースしているが、過去にはYouTubeで、エレファントカシマシの『四月の風』のカバーなども披露している。そして、現在ソロツアーを行っている岡田奈々は、自身のYouTubeで、Official髭男dismの『Cry Baby』やback numberの『クリスマスソング』などをカバー。最近は、映画『NaNa』の主題歌で、HYDEが手掛けた中島美嘉の『GLAMOROUS SKY』をUPしている。まさに、岡田にピッタリなカバーだった。

この他にも、アイドルがカバーしたロックナンバーは多数存在しているし、ロック魂を感じられるアイドルもまだまだ沢山いる。
サブスクやYouTubeで探してみるのも楽しいだろう。そして、今年のフェスでは、ロックバンドに負けないアイドルのパフォーマンスにも注目して欲しい。もしかしたら、今回紹介したカバー曲が生で聴けるチャンスもあるかも知れない。

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