【関連写真】ドラマ『silent』での演技も話題になった夏帆
『ブラッシュアップライフ』は、地元の市役所で働く33歳独身女性・近藤麻美(安藤サクラ)が、人生をゼロから何度もやり直していくタイムリープヒューマンコメディー。脚本をバカリズムが手がけ、俳優陣も豪華な顔ぶれが並ぶ。
第1~4話は、民放公式見逃し配信サービス「TVer」での再生数が累計1,000万再生を突破(1月31日時点)。現在TVerで観られるのは第1~3話と最新話のみだが、現在も放送後はSNSが盛り上がり、考察が飛び交うほど。2月19日放送の第7話では、すでに人生4周目の麻美。ラストでは、生まれ変わった人生で仲良くなった同級生の宇野真里(水川あさみ)に「何周目?人生」と質問され、タイムリープを見抜かれる――。
本作は、主人公の麻美、幼なじみで親友の“なっち”こと門倉夏希(夏帆)、“みーぽん”こと米川美穂(木南晴夏)をはじめ、豪華な俳優陣による掛け合いも楽しみの一つ。演技力に長けた俳優ばかりだからか、会話のテンポの良さには目を見張るものがある。主人公の親友役を演じる夏帆は『架空OL日記』にも出演しており、バカリズム脚本の作品への参加は3度目だ。
本作では自然体な演技が好評の夏帆。彼女がブレイクしたのは、11代目リハウスガールに抜擢された2004年のこと。
2007年に公開された『天然コケッコー』では、映画初主演を務めた。くらもちふさこ原作のコミックを実写映画化したこの作品で、夏帆は第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。それから10年以上の時を経て、2020年に公開された『Red』では、主人公・塔子がもつ複雑な心境の変化を表情で表現し、禁断の恋に溺れていく艶のある演技を魅せている。それまでの清純派イメージから一転するセンセーショナルな役ながら、彼女の魅力がしっかりと活かされた作品だ。
近年は話題のドラマへの出演が相次いでいる。2022年に放送された『silent』では、生まれつきのろう者・桃野奈々を演じた。難しい役であったにもかかわらず、手話はもちろん、手話と連動して変わっていく表情に目を奪われた視聴者も多いだろう。奈々の手話には勢いがあり、おしゃべりな女性であることまで伝わるほどだった。
また、奈々には切ないシーンも多々あった。恋慕っていた想(目黒蓮)がヒロイン・紬(川口春奈)と再会し、自分の気持ちを抑えられなくなってしまう回では、手話と表情だけで愛情や嫉妬、切なさを表現し、視聴者から「奈々ちゃん切ない…」との声が多数あがった。想からかかってきた電話で震えるスマホを耳に当てるシーンは、涙した視聴者も多かったのではないか。
『silent』と同時期に配信を開始したNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』では、主人公・晴道(佐藤健)の婚約者・恒美を演じた夏帆。真面目で活発かつ気が強く、どこか悲壮感の漂う女性を熱演。名だたる俳優陣の中でしっかりとキャラを立たせており、『silent』とは違う顔を同時期に見せていたことから、「やっぱり夏帆の演技はすごい」と評価された。
明るいながらも悲壮感漂う役だった『silent』『First Love 初恋』だが、これらで演じた役が話題に上がり高評価を得ているところをみると、やはり夏帆自身の演技力に理由があることがうかがえる。ストーリー上、悲壮感漂う人物に目がいく人が多くいるのも事実だが、それを夏帆が演じることに意味があるのだと思わせてくれる。視聴者に「地上波でも配信でも報われないなんてつらい…」と思わせるほどの引力をもつのが彼女なのだ。ここまで感情移入をしてしまう人物に作り上げたのは、紛れもない夏帆自身である。
絶賛放送中の『ブラッシュアップライフ』について。映画ニュース・TVドラマ情報やレビューをメインとしたWebメディア『リアルサウンド映画部』のインタビューでは、「(本作では)役作りは全然していないんです(笑)。逆に言えば、もしかしたらそれが役作りになるのかもしれないというくらいで」と話している。かといって素の自分で挑んでいるわけでもないようだが、バカリズム脚本3度目の彼女は「升野さん(バカリズム)の脚本は毎回そうなんですよね」と語る。喋り方や振る舞いを計算して作ろうとせずとも、自然と出来上がってくるのだと。
しっかり準備をする役、役作りをせずに挑む役…どのような役も自分のものにできるからこそ、彼女の演技は安心して見られ、物語の中の一人の人物としてそこに存在するのだろう。安心してストーリーに集中できるからこそ、「彼女が出る作品なら観てみよう」と思う人が多くいる。作品がヒットするのも納得だ。
2022年の年末は悲壮感を漂わせる演技で魅せた彼女。役作りをせずに挑む『ブラッシュアップライフ』の“なっち”は、今後どのように魅せてくれるのか。人生4周目に突入した麻美とは疎遠になってしまった“なっち”と“みーぽん”。また3人娘のわちゃわちゃを楽しみにする声も多いが、果たしてどうなっていくのか。最終話まで目が離せない。
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