──毎年TIFには足を運んでいるんですか?
竹中 教え子たちの帯同もあるので品川ステラボールで開催された第1回から欠かさず行ってます。TIFで新曲をお披露目するグループが多いので、自分が振付を担当した曲はなるべく観るようにしています。それ以外は、観に行きたいグループのタイムテーブルを組んで、友達と照らし合わせて「このライブは一緒に回れるね」とか、「この時間は熱さの限界だからゴハンに行こう」とか、話し合って決めています。
──観に行くグループの基準はあるんですか?
竹中 ハロー!プロジェクトやでんぱ組.incのように、普段はファンクラブに入っていないとなかなか単独ライブを観る機会がないようなグループは優先しがちですね。あと2017年から(東京)女子流ちゃんが戻って来ましたが、TIFは10年の歴史があるので、伝統芸能のように「TIFに来たらこれだよね」という初期から出ているグループはなるべく観ておきたいと思っています。
──未見のアイドルは?
竹中 フェスの醍醐味ですね。気になるけど観たことのなかったアイドルはTIFで確認して、そこで良かったらリリイベやワンマンライブにも行きますね。いわばTIFはホップ・ステップ・ジャンプの“ホップ”みたいな場でもあります。
──幾つもあるTIF会場の中で、特にお勧めを挙げるとすると?
竹中 屋上のSKY STAGEですね。朝・昼・夕方・夜と全てが違うロケーションになって、他にはない景色でアイドルを観られるのが本当に素晴らしい。
──ライブ以外で楽しみにしていることはありますか?
竹中 推しのアイドルが考案したアイスや丼物などの“コラボフード”は食べるようにしています。推しのライブを観て心が元気になって、コラボフードで体も元気になる。すごく理に適っているんですよね。
──さて、ここからは今年のTIFで竹中先生が、このアイドルは見ておいた方がいいという推しのグループを3組お聞きしたいのですが。
竹中 順不同であげると、桜エビ~ずはぜひチェックしていただきたいです。
──読者のために、簡単なプロフィールを言うと、私立恵比寿中学の研究生ユニットとして2015年に結成した6人組です。
竹中 2018年6月から12カ月連続リリースなどをやっていて、ここ1年の楽曲がどれもすこぶる素晴らしいんです。
──他にはいかがでしょう?
竹中 二丁目の魁カミングアウトもぜひ見ていただきたいです。
──「ゲイでもアイドルになれる」をコンセプトに2011年から活動を始めた4人組ダンスボーカルユニット。リーダーで全作詞を担当しているミキティー本物はアイドルのコレオグラファーとしても活動中です。
竹中 活動年数に対してTIFに出られるまで時間がかかったので爪痕を残そうって気概を感じます。グループの歴史や歌詞を知らずとも、ステージからの熱量だけで自然と泣けてきてしまいます。今パフォーマンスで一番涙が止まらないアイドルです。
──あと1グループとなると……?
竹中 lyrical schoolも注目してほしいですね。
──2010年に前身グループ結成、2017年現在の5人体制になったヒップホップアイドルユニットです。
竹中 ヒップホップというと敬遠するアイドルファンも多そうですが、各メンバーのキャラクターが立っていて可愛い女の子と優しいお姉さんしかいないので安心して下さい(笑)。腕を振ったり、掛け声を出したりとライブ中にやることが多いので初心者でも楽しめます。
──さて、今年は10周年ということで、竹中先生は“アイドルブームの功労者”たちにも改めて注目されているとか。東京女子流、SUPER☆GiRLS、寺嶋由芙、Negicco、でんぱ組.inc、バンもん!といったグループたちですが……。
竹中 それぞれ一度はTIF離れする時期もあったものの、やはりこの布陣の安心感は絶大ですね。(東京)女子流ちゃんは2017年に“TIFカムバック”してからは昔の曲も今の曲も織り交ぜたサービス精神満載のセトリで楽しませてくれます。スパガ(SUPER☆GiRLS)もこの10年で大幅なメンバーチェンジがあったとはいえ定番の夏曲がたくさんあるのも強みです。
──TIFの歴史を語る上で外せないレジェンドグループと言ってもいいかもしれません。
竹中 48グループやハロプロの方が歴史は長いですがTIF参戦はしばらく経ってからのことですし、2010年代のアイドルブームとはまた違う時流なので、彼女たちこそがいわば2010年代のTIFの功労者なんですよね。そんなグループのステージを観れば、この10年間のアイドル文化をおさらいすることができるのではないでしょうか。
──なるほど。
竹中 レギュラーメンバーの中では“アイドル界の良心”とも言うべき寺嶋由芙ちゃんや、Negiccoも観て欲しいですね。ファンも素晴らしい方たちばかりで、内輪受けではなく、みんなで楽しもうという雰囲気に包まれているので初めてでも安心して参加できますし、頼もしさすら感じられます。
──確かに幅広いラインナップもTIFの魅力です。
竹中 あと手前味噌で申し訳ないんですが、prediaにもぜひ注目して頂けたらなと。結成は2010年とTIFと同世代でほぼ皆勤賞ながら、「大人アイドル」をコンセプトに掲げている彼女たちがアイドルファンに受け入れられるには随分と時間がかかりました。しかしここに来て一気に花開いてるところなので、今が見時かなと思います。
──ここに来て花開くというのも素晴らしいですね。
竹中 10年近く掛けて“最新が最高”なんて夢があることじゃないですか。いわゆるベテラン、中堅と呼ばれているグループを中心に挙げましたが、もちろん文化を継続、発展させるためには新しいアイドルがどんどん生まれてくるべきだと思います。でも続けてくれていることの価値だったり、同じ曲を歌い続けることの尊さだったりを1年に一度再確認できる場も、TIFなのだと思います。
▽竹中夏海(たけなか・なつみ)
振付師。HKT48、=LOVEなどの大型グループからアップアップガールズ(仮)、prediaなどの実力派ライブアイドルまで、振付を担当したアイドルは300人以上。また、藤井隆やヒム子(バナナマン 日村勇紀)など、性別や年齢を問わずアーティストのアイドル性を引き出すことに定評がある。