【前編はこちら】シングルマザー・青木さやかが娘との日々を赤裸々に綴る「一番、書きたくないことを書いた」
【写真】エッセイストとしても活躍する青木さやか
本書は、青木にとって3冊目のエッセイ集。母親との関係を告白した『母』(中央公論社)、生きづらさを本音でつづった『厄介なオンナ』(大和書房)と、エッセイストとしての筆力も高く評価されている。
「読んでくれる人がいて、感想をいただけると『ここにいてもいいんだ』と思える。誰かの役に立っているような気がするので、それはうれしいですね。自分の子ども、というと大げさですけど、本はやっぱり特別なものだと思います。本を読むときって一人じゃないですか。だからこそ書けることもあって。今回の本にも、すごく重たくて、本当は絶対に言いたくないことも書いています」
エッセイを書くようになり、「本は人を救ってくれるもの」だと強く感じるようにもなった。
「自分が娘を怒ってしまうことや恋愛について思うことを書いていると、私はこういう理由でこの感情になっていて、こんな解決策があるのかもしれないと思えるんですよね。より自分を知れるようになった。
1冊目のエッセイ集『母』では、同じように母親との関係に悩む女性から、たくさんのメッセージが届いたという。
「本の感想というよりも、自分自身が悩んでいることを伝えてくださる方がすごく多かったんです。皆さん、ちょっとずつ蓋をしていた部分があって、その解決策のヒントを『母』に見つけてくれたのかなと。
私のように母が嫌いで、自分は親子関係がうまくいかなかったから親になる選択肢を取らなかった人もたくさんいると思うんです。今回の本はそういった方にも読んでいただきたいですし、関係がよくないなかで子育てをしている方。同じ境遇の方が読んでどういう風に感じるのか。すごく興味がありますね」
本書では、子育てを通して変わっていった母への思いやその複雑な感情に向き合う姿もつづられている。
「今は、あんなに嫌いだと思っていた母と仲直りができたんだから解決できないことはない、と思っていますけど、昔は母子関係が悪かったことで自分が母になることにすごく恐怖感があったんです。
今もそれがなくなったかといえば嘘になるけど、じゃあどうすればいいのか。
子どもの有無に関わらず、男性にも読んでほしいと力を込める。
「男性ってお母さんのことを神聖なものというか、そう思いたいという人が少なくないのかなと。母親と仲が悪いと告白したとき、それをあまりよく思わない人、批判的だったのは男性が多かったんです。こういう悩みを持つ人もいるんだ、ということを理解してもらえると女性も楽になるんだろうなと思ったりはします」
また、本書が子育てを取り巻く環境を考えるきっかけの一つになったら、とも語る。
「離婚して仕事をしながらワンオペで育児をして生活する。体力的にも精神的にも、これが本当に大変だったんですよね。倒れたこともあったし、よく死ななかったなと思うくらい(笑)。そんな非常に大変な時期を今、味わっている方もいるかと思いますし、私個人の話というよりも、一般的な話にもなるのかなと。
ここまで10年以上、子育てをしてきて『子どもがかわいい』という感情以外で子どもを産みたいかというと……。
日常のなかで、娘との時間が一番大切だという青木。日々、意識していることは?という質問には、「切り替え力かな」と答える。
「仕事で何かあっても娘との関係には持ち込まない。逆もしかりですね。もともと切り替えるのはあまり得意じゃないので、意識的に変えるようにしています。コツは『切り替えないといいこと一つもないぞ』と過去の後悔や経験を思い出す。嫌な気持ちを引きずっていても、得なことないじゃないですか。自分にとって損か得かで考えます(笑)」
取材・文/吉田光枝